水処理プラントの管理


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 故障・保守 (3 点検)

4 揚水設備(1)汚水・雨水ポンプ


下水処理場に流入した下水を処理系に送水したり、大雨時の雨水として放流する設備として 揚水ポンプ設備があります。
ポンプ設備に日常レベルで異常がないかの点検ではなく、修理工事を計画するため毎年、詳細な点検を行う必要があります。
設備の点検項目としては以下のようなものが考えられます。




1 ポンプ設備の点検項目



     
点検機器 対象機器 点検項目 備考
ポンプ


揚水量
流量計、流速計 ポンプ実際の能力把握
ポンプの劣化の調査

(ポンプ運転時の流量計測)

グランド部 発熱、水漏れ グランド部に適正な締めしろが確保されているかの確認も行います。
確保されていない場合は、パッキンの交換修理を計画します。
なお、適切な漏水量の調整やグランド部の発熱確認は日常点検で行うべきものです。
メカニカルシールの場合は、ほとんど外部確認できるところはありません。漏れがないかの確認しなります。
メカニカルシールの場合、取り付けが適正であれば運転時間により修理計画(ポンプのオーバーホールを伴う)一緒にになります。 計画より早く漏れ始める場合は、ポンプの分解が必要な構造のメカニカルシールもあるため早めのオーバーホールとなることもあります。
真空破壊弁 分解清掃、機能確 弁内部のフロートが固着したり、配管が詰まったりすることがあります。
正常に動作しないとポンプのインペラ部に貯まった空気やガスで揚水ができない場合もあります。

フローリレー
ユニット
電動弁、フローリレー、圧力計、圧力スイッチ等 電動弁の動作確認します。年数が経過すると錆、スケールにより動作が緩慢になってきます。
また、軸シール部より漏水が発生する場合があります。
フローリレーの動作も年数が経つと水アカ、錆などにより動作が緩慢になり、流量を正確に反映しなくなります。
また、電動機の冷却、シール水と分岐している場合は各分配量が適正かを把握します。
この際、降雨時など汚水・雨水ポンプが全台が動作した状態(各ポンプを運転せず全台のシール水弁を開けた状態)で確認を行っておくことも重要です。
フローリレーが影響されないか確認しておきます。

(9 フローリレーユニット)


フローリレーや電動弁については、動作が緩慢の場合、分解修理を行います。 過去何度も行ってきましたが手間の割に完全に修理はできません。(技能レベルが低いのかもしれない)
緊急時の対応としては良いのですが、コストと信頼性を考慮すると交換修理を優先すべき時もあります。

  
ストレーナ 潤滑水、封水水用 潤滑水・封水水配管の錆やスケーリングが付着します。
特にろ過水を使用する場合は異物の付着が多くなル場合があります。
なお、ストレーナの点検周期は運転頻度や水質(上水か、ろ過水か)によりますが、年点検はともかく1~3か月に1度は点検を行います。

(9 フローリレーユニット)


ストレーナは封水の使用量や配管サイズで取り付けられます。
機械屋さんにより、往々にして小さいサイズ(適切なサイズ)となります。
毎回点検を行うことを考慮して、サイズの大きいもの、点検しやすい形式のものの取り付けてほしいものです。


封水量 モータ側・ポンプ側回収式の回収率計算
上水などを使用している場合は循環するため、回収率がポンプのシール部の漏れを反映します。
ほとんどの場合、98%以上となりますが、斜流ポンプで水中のインペラでシールが劣化すると回収率が悪化します。
回収率がインペラ部で悪化しても直ぐポンプを運転できない訳ではありませんが、ポンプのオーバーホールを行わないと修理ができません。
  
異常音振動 振動計による測定 指定された場所でポンプの水平方向、軸方向などのベースの振動を測定します。
意味のあるデータを測定するには、全速時のデータが必要ですが、雨水ポンプなどの試験を行う循環運転では、揚程・流量とも実際の 運転時を再現できません。
このため、参考値程度のデータとなります。この程度で異常があるポンプの運転は控えるべきで緊急修理を要します。
圧力 ポンプの吸い込み、吐出圧力。
封水圧力
各圧力が既定値内であること。
また、圧力計の不良、詰まりの確認

逆止弁 主弁 動作不良
内部の逆流、軸シール漏れ
逆止弁の動作が正常に行われるか。逆止弁が閉になって逆流が発生していないか確認します。
漏れは、吐出配管内の逆流音や対象ポンプの吐出井で他号機が停止できる場合は吐出井水位変化などから判断します。
吐出弁とシリーズに設置されている場合は、ポンプ停止後、機側で吐出弁を開けて確認します。
ダッシュポッド 油量・油漏れ 内部のオイル量の確認を行い、不足している場合は補充を行う。
交換は3年以上で定期定期に行うことが考えられますが、動作頻度により期間を調整します。
個人的には回転機と異なり、劣化が少ないと考えています。
なお、経年劣化でシールが劣化するので漏れが多くなります。ポンプの定期修理に合わせて修繕します。
    
吐出弁 電動機 開閉電流値 過負荷の確認。電動機の異音確認。
弁関係 異常音・給脂状態
減速機の異音
分解しないと給脂できない構造のものもあり、ポンプの修理時期に合わせた長期計画に入ります。
弁帯の漏れの確認を行います。確認方法は逆止弁とほぼ同じになりますが、逆止弁と吐出弁はシリーズに付いているため 逆止弁を少し空いた状態で固定し、ポンプを停止させないと漏れの確認はできません。
電動機 電流値 機側盤
起動時の電流値及び全速運転時の電流値の確認が重要ですが 全速時の運転ができない雨水ポンプなどがあり、この場合は概ね起動時の電流値の確認に なります。
回転数 測定器
回転数の測定は、本体の実際の回転数と回転計装との比較。揚水量を演算で行っている場合にずれが生じます。
揚水能力の確認のために測定します。
なお、電動機の回転数の検出器は交流電圧方式と直流電圧方式があります。直流電圧方式には回転数検知器にブラシが使用されているため 電動機の点検時に併せてブラシの残量をチェックします。

作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」
  
温度
上部・下部案内軸受
スラスト軸受
温度計
運転中に軸受けの温度を確認します。因みに温度の以上は、 長い経験の中で発生したポンプはありません。電動機は信頼性がさすがに日本製は信頼性が高い。

作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」

上部・下部軸受油量
油量レベル
点検では油量レベルを確認し、シール等からの漏れがないことを確認します。 オイル交換については、メーカー推奨は通常毎年ですが、実際は運転頻度により3~5年周期 です。

作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」

ブラシ部 塵埃、摩耗状態
ブラシの点検は年点検ではなく清掃時に定期的に確認します。

(7 巻き線型高圧電動機器の保守)


作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」
引き上げ装置「電源切り」
電動機二次「接地」

スリップリング 腐食、表面の荒れ
年点検でも確認しますが、表面の焼けや荒れの状態確認は、定期的なブラシ清掃でその都度確認を行います。

(7 巻き線型高圧電動機器の保守)


作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」
引き上げ装置「電源切り」作業の養生
電動機二次「接地」

ブラシ引き上げ装置 動作状態、給脂
動作の確認は、ブラシ点検清掃時に定期的の行いますが、給脂などは、年点検で丁寧に行います。
また、電動での切替ではなく、手動操作で確認を行います。 手動操作の点検時、引き上げ装置の電源が入っていると強制的に始動位置に戻そうとするシーケンスが動作する場合があります。

(7 巻き線型高圧電動機器の保守)


作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」
引き上げ装置「電源切り」作業の養生
電動機二次「接地」

短絡装置 動作状態
接触子の接触面の状態(接触状況及び変色等)を確認します。

(7 巻き線型高圧電動機器の保守)


作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」
引き上げ装置「電源切り」
電動機二次「接地」

液体抵抗器 昇降装置 異音
昇降装置に減速機を使用している場合は、減速機の異音確認。給脂タイプでは給脂を行います。

作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」
液体抵抗器(本体を点検する際)「電源切り」
電動機二次「接地」

内部液 液量
内部の液量が適量かの確認を行います。少ない場合は蒸留水(上水でも可か?)を補充します。
日々の通常点検でも実施しているので、通常は低下していないはずですが。

作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」
液体抵抗器(本体を点検する際)「電源切り」
電動機二次「接地」

冷却系 循液ポンプ、冷却器
ポンプのシール部の液漏れ、配管部の液漏れ等確認。

(4 揚水設備(2)ポンプ補機類)


作業養生
機側現場盤「機側」
電動機本体「遮断器切り、引き外し」
液体抵抗器(本体を点検する際)循液ポンプ「電源切り」

VVVF 定格電流・電圧 測定値
運転時の電圧・電流値のデータ測定(現在は液晶パネルで確認可能)   
冷却ファン 異音
冷却ファンの異音確認。通常は早期に異音は発生しません。(定期的に修繕すれば異音は発生しないはず。)  
フィルター 清掃
運転頻度の高い汚水ポンプ用フィルターは汚れるので年点検で必ず清掃を実施します。

養生作業
ポンプの点検時の養生については、運転時のデータをとらなければいけないことがあるため、手動又は機側操作で運転できる状態になります。
ただ、ポンプ本体を触ることになる場合は、ポンプ電動機本体「遮断器切り、引き外し」を行い間違って運転しないようにすることが必要です。



2 ポンプ運転時の流量計測


(1)流量「(22 揚水ポンプの流量計測)」

ポンプが流量を把握して能力の低下の状態を調査します。
流量の測定には以下の方法があります。

(a)流量計(流速計)
ポンプに流量計(流速計)が設置されている場合は回転に伴うポンプ流量の実測します。
ポンプ井及び吐出井の水位差で補正しながら、データをとります。

(b)系統流量計流用
ポンプ単体で流量計が設置されていない場合で水処理系統の電磁流量計が使用できる場合は、 対象ポンプを1台だけ運転してデータをとります。(a)と同様に水位で補正します。


(c)流量計なし
(a)、(b)が利用できない雨水ポンプなど、流量計がされていない場合は、この測定が できません。
ポータブルの流速計を使用することもできますが、精度を確保することが難しくなれていないこともあり ほとんど使用していませんでした。



3 各ポンプの点検時の問題点


(1)点検時の流量の把握
ポンプの流量を正確に把握すると能力低下などの目安になり、早期のオーバーホールが必要かなど修繕計画に役立つデータとなります。
ただ、現場では揚水量の正確な把握は中々難しいと感じます。
劣化がわかる精度の高いデータを測定するのはやっかいです。
ただ、汚水ポンプなど連続運転を行うポンプでは、水処理系の流量の連続監視から運転時の流量低下などが推測できる場合もあります。
点検データ取りで意味のある場合もあります。

(2)点検運転時と実際の運転
点検運転は、実際の運転状況と同じようにできれば信頼性の高い設備を維持できます。しかし、
雨水ポンプになると、運転時のデータ取りは雨水排水を伴うことになり、晴天時のデータ取りはほぼ不可能です。
機能的には、避越ゲートなどを利用した循環運転ができる場合は揚水をしていることは確認はできます。 ただし全速運転など、実施の降雨時の状況を再現するとはできません。
このため、データとして意味のある揚程を設定できなかったり、全速運転を行うと貯水量が足りなかったり、と制限条項はいくつもあります。

ただ、一定時間運転できることにより、一番重要なポイントである
「正常にポンプは運転して揚水しているようだ」
の確認は取れます。



4 点検運転周期

上記の主な点検は年点検を主体に記入しましたが、概ね以下のような確認運転が必要と思われます。
(1)各補機を総合的な点検は1年に1回
(2)雨水ポンプなどの循環運転などは1年に4回以上
(3)台風前や大雨が予想される前日までの事前点検運転

5 点検のための点検

各設備の点検を行っていくと、点検が決められているから点検データを収集するだけというマンネリに陥ります。
これは、データをとるだけで安心してしまう状況です。

面倒くさいが、点検はあくまでも不具合や修理箇所を探し出す目線での点検が重要だと考えています。
どこかに不具合や異常は本当にないのか?

6 年点検の報告書

年点検の報告書の様式は毎年同じですが、データを記録したり、「異常なし」の表現となりがちです。 ただし、異常がある場合は写真等でわかりやすい報告書にします。
データだけだったり、異常ありの表記で「写真なし」では後日修理を検討する場合にまた設備の再確認が必要となります。
また、できれば、修理図面を起こす場合に参考となるよう完成図書図面や説明書を添付し具体的な内容にまとめておきます。
手間ですが、先回りしておけば部署間の報告書に流用できたりと次の作業の手抜きができます。


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