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 故障・保守 (1 故障)

18 計装変換器の故障


1 変換器の劣化初期
長年使用していると計装変換器が壊れます。
壊れますと確定的な言い方となりますが、初期のトラブルでは、正常運転の状態と故障状態が混在します。
故障は、このように中々悩ましい状況で発生します。

故障の状況は、回転数制御のポンプであれば、まれに流量が出なくなったり不安定になったりします。
乾燥時は正常、湿度高いときは異常など気象条件によったり、夜間に故障が起こりやすいなど時間によったり。
短時間の運転中は発生しないなど運転状況によったり、いろいろです。
このため、初期の故障はなかなかとらえどころが困難です。
長時間、正常な運転が継続することもあります。


2 変換器故障の調査 (1 故障の検討)

初期の段階の故障では、故障推定箇所がいくつもあります。
VVVF本体や信号経路(CTRのソフトやIO基板、信号変換器、配線コネクタ等々)です。
また、模擬信号試験を行っても一見、正常な場合もあります。
原因がわからず、暫く、場合によっては長い期間「様子見」という状況が続きます。

やがて故障頻度が上がってくると、
「様子見」とほっておくことができなくなります。
今度はまじめに調査を行います。
調査で、故障原因の切り分けを行います。VVVF本体の回転数信号をCTRと切り離して固定してみたりしながら原因を特定します。

やがて変換器の出力電流を確認し、不安定な状況が確認できれば、解決です。しかし、現状はそうとも限りません。
あれやこれや推論を立てやがて、変換器にたどり着きます。
まだ、模擬信号でも正常です。でも疑わしい。変換器の交換を検討します。
変換器の予備品があればベストです。
交換後、異常が発生しなくなれば、これがかなり高い確率で原因と判明します。

常に予備品があるとは限りません。
同型のポンプで同じ部品が使用されている場合は入れ替えることもあります。
これにより、故障が移動すればあたりです。



互換品を購入後、交換し修理完了となります。
日頃、忙しい中ではここで作業が終わりとなります。

反省です。
維持管理からすれば、計装設備をここまで寝かせずもっと前に修理工事や更新の計画立てるべきなのでしょう。
(9 維持管理の計画)


3 変換器故障の原因
今回は、その故障した変換器(20年経過品)を分解して原因を調査してみました。
今では数多く使用されているM-SYSTEM製の信号絶縁変換器(Isorater)です。
故障品は、いつか原因を調査してみようとストックしておいたものです。

変換器を分解してみました。
まず一番疑ったのが電解コンデンサです。
この変換器の場合、3個使用されています。
取り外して、各コンデンサをチェックしていました。
まず、電源に近い電解コンデンサは案の定、容量も測定できず不良です。
液漏れも発生していました。
その他、2個については、劣化はしているものの液漏れは発生していませんでした。

   


液漏れが発生している箇所をよく調べると、回路パターンが電解コンデンサの漏れた液で腐食して 一部が断線していました。
断線している回路パターンを修復し、新しい電解コンデンサを取り付けました。
他の回路部品に特に異常が見られないためとりあえず通電試験を行うことにしました。

と、変換器は正常に動作するようになりました。


ここで、判明したのは、M-SYSTEMの回路パターンの厚みがかなり薄いことです。
修復で半田をつけているときにもランドがはがれたりします。やはり、このレベルでコストカットが 行われているようです。
プラントメーカーの信号変換器を分解したことがありますが、このような厚みではなかったように記憶しています。 (今では、各社M-SYSTEM製やOEM製が多い)

同様の変換器を3台修理してみましたが、3台とも同じ現象が発生していました。
1台は、回路パターンを修復しても動作しなかったため部品の調査を行ったところ、さらにダイオードがショートしていました。適当なダイオードと交換し動作確認。 3台とも稼働品とはなりましたが、精度は不明です。

また、別に、信号絶縁変換器(出力0~10V)がありこちらも修理を行いました。やはり、電解コンデンサの下にある回路パターンが 腐食でやられていました。
こちらは、回路パターンの腐食が広かったため、ジャンパ線に変更しました。




製品寿命
M-SYSTEM製の変換器(限らず電子機器のほとんど?)の寿命を決めていたのは電解コンデンサです。
(さすがに断定はできませんが)
修理を想定した電子機器であれば、回路パターンの厚みをもう少し厚くする等の対策が必要です。
しかし、20年近く使用できたことを考えれば、これで十分なのかもしれません。
現在の電子機器は消耗品ですから。
さらに、原因としては、回路パターンの厚みではなく、電解コンデンサの寿命に左右されているのです。
やはり、電子部品の修理は、MAX15年~20年となり、
温度が高い場所(電解コンデンサの劣化が早い場所)ではもう少し、早い修理が必要になるようです。

(20 滞水池の長い物語)


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