14 実際の制御(PID制御)
処理場の各ポンプや風量弁の制御には古典制御といわれるPID制御が使用されています。
過去、各種の現代制御が導入されたことがありましたが、処理場の要求レベルと合致していなかった
ようで廃れてしまい、現状の制御ではPID制御となっています。
(もしかしたらどこかで生き残っているかもしれませんが残念ながら記憶がありません)
ポンプや風量弁の制御が追従しない場合、PIDの各要素の調整を行うこととなります。
なお、現代制御を説明できる知識がないのでここでは割愛しました。
1 雨水ポンプ制御例
以下の制御は雨水ポンプの水位一定制御の場合です。
水位偏差からポンプの回転数を制御します。
(4 揚水設備 1)水位一定制御(改良))
(1)PIDの応答性が遅いため、ポンプの回転数の低下が遅れるためポンプが停止しています。
通常のON・OFF制御と似てきます。
ただ、降雨量が少なくなり、ポンプが最低速でも流入量をオーバーする用になるとこのような動作をします。
(2)PIDの調整を行い応答性を上げるとポンプを停止しないで運転が可能となります。
この制御の場合、さらにPIDを調整すれば、ほぼ水位を一定にすることが可能です。
ただ、調整するには、模擬だけではなく実際の降雨時の調整が何度か経ることが必要になります。
しかし、小雨だと充分調整ができません。
かといって大雨で雨水ポンプが何台も運転している状況で制御系を触るのは中々勇気がいります。
2 各汚泥ポンプ制御例
ポンプ制御の制御構成の標準例としては以下のになります。
指定流量に対して実流量が同じになるようにVVVFでポンプの回転数を制御します。
ポンプの制御を追従させるためPIDの調整を行います。
まずIの要素の調整を行い遅延の最適値を探します。
応答性はPの要素を上げ下げし、動作を確認します。
同時に2つの要素を動かすとわからなくなるので調整は1要素ずつ行います。
なお、ポンプは、短時間で結果が出るため調整はそれほど難しくありません。
3 反応タンクのDO制御例
反応タンクのDOを制御するために各風量弁がカスケード制御となっています。
このため、反応タンクのDO制御を調整するには、制御の対象がDOのPIDなのか、風量弁のPIDなのかを見極める必要があります。
この際、反応タンクの風量やDO値のトレンドを確認し、どのPIDのチューニングを行うべきか判断します。
(1)DO値はほぼ設定値に追従しています。
しかし、風量弁が激しく動作しています。
風量弁の動作が過敏で弁の劣化を促進する場合や圧力変動が他に影響する場合があります。
このため風量弁のPIDの調整を行うこととなります。
(2)風量弁は応答していますが、DO値の設定値から大きくずれます。
風量弁のPIDの応答性が悪い場合もありますが風量弁の応答は悪くない場合は、DO制御のPIDの調整し確認することになります。
なお、反応タンクのDO制御の調整はポンプ制御と違い時間軸が長く短時間の確認ができません。
注意点
この制御の表現には抜けているところがあります。
送風設備と反応タンクの規模にもよりますが実際には送風機の圧力制御も影響してきます。
今回は複雑なので省略しています。
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過去、数ヶ月以上、調整と確認を繰り返したことがあります。
それでも満足のいく範囲にできない場合がありました。このときはさすがに制御プログラムの修正も必要だったと記憶しています。
また、風量弁が劣化してくると一部の動作範囲で緩慢になり、制御が追従しなくなります。
何とかPIDで補間的に使用できないかと挑戦しましが結局不十分なものでした。
風量弁の故障は制御では逃げられません。計画的に修繕しましょう。(9 維持管理の計画)
4 補足
(1)PI制御
処理場で使用されているPID制御ですが、Dの要素はいつも「0」が入力されています。
Dの要素を必要とした制御対象を見たことがありません。
(見ていないとは言い過ぎで、唯一、自家発のウッドワードのガバナ制御装置でD要素を調整したことがあります)
よって、処理場の各設備の制御調整はPIの要素だけとなります。
(2)制御定数
各電機プラントメーカーの制御コントローラのP、I、D制御定数値は共通ではありません。
数値は桁や大きさはシステムにより異なります。
メーカー毎の数値の大きさは異なりますが、大きくした場合、小さくした場合の変化の方向性は同じように構成されています。
汚泥ポンプ制御設定画面例
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PID制御(フィードバック制御の応答性)
(シミュレーション)
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