水処理プラントの管理


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  制御 (揚水設備)

4 揚水設備


1 分流・合流汚水ポンプ、雨水ポンプの制御

揚水設備でポンプの制御は重要な仕組みです。安定的に運用するためにその長所・短所を把握しておくことが 重要です。おおむね、以下のような制御方案があります。
(1)ON・OFF制御
(2)流量一定制御
(3)水位流量制御
(4)水位一定制御(改良版含む)
(5)予測制御(名称いろいろ)




(1)ON-OFF制御

ポンプの運転水位・停止水位を設定します。複数台ポンプがある場合は全体的に安定運転が できるように運転範囲をポンプ井水位に合わせてずらします。小さいポンプほど早く運転す るように設定します。なお、回転数が変更できるポンプも全速運転で運用します。 このため、CTR故障時を想定したバックアップ的な運用となるため、警報設定器などハード シーケンスにより構成します。



(2)流量一定制御

あらかじめ設定された目標流量によりポンプの台数を決定するとともに、この目標吐出流量と 実際のポンプ吐出流量の偏差からPI制御で速度制御を行います。通常的に運用すると、流入量変動を沈砂池、 幹線の水位変動で吸収することが必要なため、貯留容量を検討したり、流入量の変動に逐次対応しなければな らないためプラントの工事等の運用変更の短期的なもので運用しています。


(3)水位流量制御

水位・流量曲線を設定しておき、この曲線に併せてポンプの流量を調整します。合流ポンプの 場合、晴天時と雨天時で大幅に流入量が変動するため設定曲線は2つ以上必要です。 曲線設定、特に降雨状況により設定する場合は何度か実証試験を行う必要があります。



(4)水位一定制御

あらかじめ設定された水位目標値とポンプ井水位の偏差から目標吐出流量を演算し、目標吐出流量によりポンプ台数 を決定するとともにこの目標吐出流量と実際のポンプの吐出流量偏差からPI制御で速度制御の運転を行います。 水位の変動をさせない分、吐出流量変動が大きくなります。このため汚水処理には不向きと思われます。


1)水位一定制御(改良)

通常、水位一定制御は、複数台のポンプに対して、水位を1点しか設定していません。このため、ポンプ容量にかかわらず、 同じ水位の運転となるため、大型ポンプに合わせた運転水位を設定することになり、常にポンプ井水位を高めに維持される こととになります。また、水位偏差を目標流量に換算した台数制御を行っているため、演算遅れが生じます。 これを改善するために、運転号機に合わせた目標水位を設定できるようにします。
運転時の目標水位は、
①1台目が運転したときは、1台目の目標水位
②2台目の運転時は、2台の目標水位(1台目+2台目)
2台のポンプは、1台のポンプのように目標水位を維持するために増速・減速運転します。
③3台目の目標水位は、3台のポンプの目標水位(1台目+2台目+3台目)
となります。
3台のポンプは、1台のポンプのように目標水位を維持するために増速・減速運転します。


2)水位一定制御(改良)版の特徴

水位一定制御改良版では、制御演算に流量演算を必要としません。
流量演算モジュールでは、応答遅れなどが存在し、最近増加しているゲリラ豪雨に対応できません。
この方式では、単純に、目標水位を外れると、回転数を上昇・下降を行うだけで液体抵抗器の固有の応答性まで追従を 上げられます。
また、運転している号機は、常に速度制御されるため、あたかも1台の大型ポンプが運転しているよう になります。これが急激な水位上昇(流量増加)や水位低下(減少)などの変動の耐性になります。

ただし、あまり水位偏差に敏感に回転数を変動させると液体抵抗器に影響がでます。 (液体抵抗器)

液体抵抗器はメーカー別に特徴があり、電油操作式(日立製)は特に影響を受けませんが、電動減速機方式 (三菱・東芝製)や空気圧方式(西原環境製)は調整にインチング防止等の工夫が必要です。なお、そこま で応答を上げなくても十分な応答が得られると思います。

近年の使用されるようになった 高圧用VVVF方式は、電油操作方式と同程度と考えられます。


(5)予測制御

ネーミングがよいがなかなか実現しない制御。うまく機能すれば最近のゲリラ豪雨対策にもなるかも しれない予感を感じさせます。いろいろな方式が考えられます。

1)流入渠の水位、ポンプ井の水位変動(貯留量)から流入量を予測しポンプを制御するもの。
流入してくる流量を演算し、ポンプの台数制御、自家発設備の先駆運転を行う。
予測に関しては、処理場内での計測値で行うので、予測範囲が限られます。



2)幹線流入監視制御と連動した降雨、幹線の水位変動から流入量を予測してポンプを制御するもの。
広域の雨量計、幹線水位計また雨量レーダの予測から流入時間、流入量を予測しポンプ場、処理場のポンプ、 自家発の運転を行います。また、ポンプ等の故障時の浸水範囲予測を監視画面上に表示します。



どちらにしてもセンサーが多い分だけ複雑になり、ウイークポイントが増える欠点があります。
実現した、事案は未確認です。


(6)制御を行うのに必要な要件

①計装1 ポンプ井水位計、吐出井水位計
②伝送1 速度制御を行う場合は速度制御可能なポンプ
③計装2 排水量演算のためポンプの回転数計
④伝送2 予測制御を行う場合は、規模により伝送数が増加します。



2 各制御の評価

(1)ON・OFF制御

長所
①起動タイミングが把握しやすい。
②ハードシーケンスにより制御の動作が理解しやすい。
③CTR故障時も運転可能
短所
①可変速ポンプも固定速運転としているためポンプの起動・停止を繰り返しやすい。 降雨の状況により、自家発設備の運転を含めると起動タイミング等の不安定要因があります。

(2)流量一定制御

長所
①工事などプラント運用時に流量調整が行いやすい。
短所
①流入変動が大きい場合は、手動介入が必要となります。

(3)水位流量制御

長所
①運転停止による流量変動が少なく安定的に処理系に送水できます。
短所
①降雨に対して水位流量曲線を何種類か用意する必要があります。 また、手動ではなく自動で切り替えるには工夫が必要です。
②台数制御の組み方にもよりますが、往々にして応答性が遅い場合があります。

(4)水位一定制御改良版

通常の水位一定制御には短所が多いため改良版の評価とします。 長所
①流入量に対して水位変動幅を排水するので、ゲリラ豪雨等に対して安定運転できます。
②運転・停止水位がわかりやすく故障等が予見しやすい。
短所
①流入量に対して変動幅が大きいので処理系に送水する場合は不向きです。
このため、分流・合流汚水ポンプより雨水ポンプに有用です。
②最低回転数の設定によっては、水位に追従してなかなか停止しない場合があります。この場合は、 最低回転数の設定値を高めに変更します。


(5)予測制御

いくら情報を入れ込んでも、制御で動かす設備が変わらなければ結果はついて来ないことになります。 ①幹線が他のポンプ場、雨水滞水池、貯留幹線とも共有している。 ②ポンプが先行待機形である。 等のハード部分の改善がなければ基本的には他の制御で間に合うことになります。 今後の内水位氾濫の予測で避難用等に利用ができるかもしれません。 また、規模が大きくなると構築を急ぐと費用が大きくなりすぎ、メリットが合わない可能性があります。 逆に構築に時間がかかると、当初に完成した設備の更新が必要な場合もあります。


3 ポンプの起動時間の検討

ポンプの制御で実際の運用に際しては、実際に運転して流量が出るまでの時間が重要です。
(1)ポンプの種別
①軸封水型式ポンプ(セラミック軸受け)       約10秒
②(軸封水+潤滑水)型式ポンプ(カットレス軸受け) 約30秒
(2)動力の種類
①買電(小型+中型)  ほとんど時間なし
②発電機(大型)    1分~2分(ピークカット制御時間)
③エンジン掛け     40秒
(3)置き方
①縦置き    ほとんど時間なし
②横置き    3分(初回真空引き)2回目以降は短い。
(4)速度制御
①固定速    揚水までの時間 約5秒
②可変速    速度制御位置まで約10~20秒
(5)他号機起動中の制限
ポンプの同時起動ができない。



ポンプが (軸封水+潤滑水)型式ポンプ(30秒)+発電機(2分)(ピークカット)+可変速(10秒)≒おおむね3分 程度の時間がかかります。

ゲリラ豪雨の状況によっては、焦りが出てくる時間です。ポンプはできる限り停止させない制御とすることが重要です。 また、この起動時間を削減する工夫も考える必要はあると思います。
たとえば
①潤滑水については、降雨の状況により、起動前に全台に供給する仕組みにし、通水確認時間がいらないようにする。
②発電機が起動すると、ポンプが停止してもしばらく運転し、ピークカットを元にもどさない。
等の工夫が必要です。




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