水処理プラントの管理


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 設計・施工 (3 電気設備)

21 水位計あれこれ



下水処理場で水位計は重要な役割を担っています。
下水では設置される場所で悪環境が存在し、方式により、適・不適が存在します。
難しいのは、ここでは機能していたものが、別の場所で機能を発揮できないことがあります。


1 水位計の主な種類

水位計は原理の違いによいり、以下のようなものがものがありますが、使用実績には大きな差があります。
接触式
  ①投げ込み式水位計
   標準的な水位計として、多数の実績があります。
  ②圧力式水位計
   標準的な水位計として、多数の実績があります。
   また、薬液タンクの貯留量測定に多用しています。
  ③フロート式水位計
   使用している数は少なく、更新されたりして現在ほとんど使用していません。
  ④静電容量式水位計
   水位計の使用事例としては、1箇所で確認したことがあります。
   そのほかは、燃料タンク等なで使用事例あり。
  ⑤ガイドパルス式水位計
   水位計としての使用経験なし。燃料タンクに使用事例あり。
非接触式
  ⑥超音波式水位計(使用実績多数)
   水位計としての使用事例多数あります。
  ⑦マイクロ波式水位計
   超音波式から取り替えたところの実績あり
  ⑧レーザー式水位計
   使用実績なし。
なお、詳細な原理、構造又は一般的な長所・短所については、他の資料(インターネット、メーカーカタログ)に委ねることとします。
また、以下の内容は、個人的な実体験に基づく感想です。技術的に多角的な評価をしたものではありません。



2 水位計の設置場所


(1)下水幹線水位計

下水幹線の水位を測る必要性は、予測制御と関わるものがあります。

(幹線流入監視制御)

過去に、幹線に水位・流速計測の測定器を取り付けて実証試験をしたいとの提案が設計部署からありました。

これについては、既存下水管をに取り付ける案だったと思います。
交通量があるマンホールの地下での点検作業は、危険であるのと同時に労力を要することがわかっていたのでやんわりお断りしたのを記憶しています。

当初から、メンテを含めて計画されたマンホールであればまた違った答えになったように思います。
このとき提案された下水管は合流雨水幹線で常時は下水が流れていませんが大雨が降ると越流して合流雨水が流れてくる幹線だったと思います。
測定器は、管低に取り付け水圧・流速センサー(演算で流量変換)を持っていたと思います。
(後に、この計測器は製造中止)
超音波式も考えられますが、校正のため、マンホールに入り水位を実測する必要があるのでメンテ上は同様の結果であったように思います。




(2)流入渠水位計

沈砂池に流入してくる下水の流入ゲートを閉鎖した時に監視する水位計となります。
流入ゲートを閉鎖した場合、幹線の水位は、通常の水位より大幅に上昇します。
この場合でも正確に測定できる必要があります。
このため、スパンの設定には、十分余裕あるものにして水位上昇時にスパンオーバーとならないように設定します。

①スパンの設定
2台設置される場合は、精度優先のポンプ井と同じスパンが1台とし もう一台は、グランドレベルにします。



②採用されていた水位計
投げ込み水位計
投げ込み式水位計は、流入渠の雰囲気に左右されない特徴があります。
防波管内に納めて使用します。
このため、注意点として防波管は水流による破損、硫化水素系のガスよる腐食(ヒューム管等の場合)。
配置上、水位計の埋没しずらい位置に設置する必要があります。
管底まで下ろすのではなく、多少ゲタを履かせた位置(30cm~50cm)に取り付けた方が埋没しません。
ただし、誤差となるので許容範囲とします。



超音波式水位計(又はマイクロ波式水位計)
超音波式水位計は、埋没の影響がありません。
取り付け位置も地上部に取り付けられるため、メンテが容易です。 難点は下水の蒸気(ミスト)が発生すると誤動作することが多々あります。
①特に冬場に発生しやすくなります。
②測定の距離があったりするとより影響を受けます。
③送受信口径が小さいほど影響を受けやすいように思います。
また、流入水量が少なく流入渠の底部が露出し、砂のでこぼこができる場合も誤動作が発生します。
(最近はプログラムで補正可能か)
あるポンプ場で超音波式を採用したのですが、設置当初から誤動作が多く使用できませんでした。 代わりにマイクロ波式に変更し改善したことがあります。マイクロ波式の方が雰囲気に耐性があるようです。




(3)ポンプ井水位計

ポンプを制御している重要な水位計です。
①2台が常用・予備機で故障時選択が可能なように設置します。
②変換器の取り付け位置が水没しない位置まで中空ケーブルを伸ばします。
③沈砂池が水没しても正常に計測できるようにスパンを沈砂池床面より3m程度高く設定しておきます。
 沈砂池床面と同じだと水没したレベルがわからなくなります。
④管底まで下ろすと、埋没することがあるので流入渠と同じで少しゲタを履かせた位置とします。

 


水位計の取り付け位置
投げ込み式水位計は、沈砂池側かポンプ井側かで防波管の考え方が変わります。
沈砂池側であれば、防波管は水没してもかまいません。変換器を被水防止高まで上げておけば問題ありません。
ポンプ井側では、防波管自体を被水防止高まで上げておく必要があります。水位が上昇してもポンプ室が絶対浸水しないように対策します。


絶対を破ってしまった例


雨水排水ポンプ場が地下構造でポンプ井側にも防波管が被水防止高まで上げられません。また付属した粗目スクリーン室側にも取り付けられない状況でした。 このため、既設の投げ込み式水位計の検出器は、ポンプ井内の壁面に固定されていていました。
水位計の点検、校正時は、ポンプ井の中まで降りていく必要がありました。作業環境は最悪です。

このため、何とか、ポンプ室に水位計を取り付けられないかと思案投げ首状態。
一時は、ポンプ室から底部まで降りられる副室をポンプ井底部まで設け、底に圧力式水位計を取り付ける 奇策を考えましたが、土木施設部門の協力が得られず。次案で妥協となりました。

水位計の防波管の開口部を重装備に工夫を行いました。
2重にフランジを取り付けています。外蓋の重量が20kg以上あるため点検時は、チェーンブロックが必要で常設にしました。
ただ、これでも、長い長い年月の間に手抜きがされて上蓋が取れてしまうかもしれません。
やはり、基本設計が重要、侮るなかれ水位計。




防波管の悩み
防波管内は流れが少ないためスカムや砂分の影響を受けます。その結果、
(1)点検・校正時にスカムで引き上げられない。
(2)水位計の検出器が軽いと中空ケーブルと一緒に浮き上がらせてしまう場合がある。
   (過去の検出器が重量があったためなかったケースです。小型軽量化が進み過ぎた結果のようです。)
(3)防波管の取り付け位置によっては砂分が沈殿して検出器が埋没してしまうことがある。

ケース1
スカムと同時に水位計検出器が上下するため水位が一定になってしまいます。



ケース2
スカムが水位計検出器を引き上げた状態で固着。水位は変動するが、深さが実測と合わなことになります。


写真



対策として、スカムを定期的に洗浄するか、自動的に表面のスカムを洗浄水でたたくようにします。



ケース3
スカムの洗浄は、それほど難しくありませんが
投げ込み水位計の検出器が泥砂で埋没して、なかなか引き上げられないことがあります。
また、引き上げたあと元の位置まで下ろせないことになります。
(昔、洗浄ホースに重りをつけて底に沈めて洗浄し、何とか検出器を回収したことがあります。)

発想としては、防波管内に洗浄水配管を下ろして、先端に洗浄ノズルを取り付ける案もありますが、 防波管(SUS管の場合)内に固定した場合、洗浄水配管(SUS管)は修理不可の配管となります。
なお、埋没する、しないは流入してくる下水にもよります。分流では少なく、合流は多い。古い機上は少なく、新しい機上は多い。 など、常に埋没するわけではありません。
また、防波管とポンプの配置にもよります。



圧力式水位計
槽外型の圧力式水位計が取り付けられる場合は、被水を考慮する必要はありません。
ただポンプ井に流入する砂で埋まることがないような配置と圧力洗浄水で洗浄できるようにする必要があります。


圧力式水位計の配置
槽外型で圧力式を取り付ける管の配置は、施設の基本計画(土木)時となるため、泥砂の貯留場所を避けて計画しておくことになります。
この辺は、新設時の考え方によりますが、残念にもこの時点から計画に立ち会ったことがありません。
配置の適、不適は、想像の域を出ません。





ポンプ制御用の水位計のシーケンス
水位計のシーケンスの考え方が増えたため、項目を別にしました。書きすぎると よくわからなくなります。



(ポンプ制御システム(水位計を含む)

参照

(4)吐出井水位計

吐出井水位計としては、圧力式と超音波式の経験があります。
超音波式水位計が使用されている箇所で、経年劣化で故障しため修理を行いました。
予算的にも押さえられ機能的にも十分と言うことで小口径の超音波式水位計に交換しました。
以後、外気温が低下してくると誤動作が増えました。下水の熱気によるミストが発生し、検出部のコーンに付着するためとわかりました。 大きな口径の旧型機は誤動作しなかったため、口径が小さくミストやコーン表面に付着する水滴の影響が出やすくなったようです。
今後、マイクロ波式に交換予定です。
施設全体で設計される場合は、圧力式水位計がベスト思いますが、防波管を設置した投げ込み水位計でも問題ないと考えます。




(5)放流渠水位計

超音波式水位計でも結露の影響は受けないので問題ありません。
と考えましたが、水面が常時ある場所は良いのですが、河床が露出する場所では注意が必要です。
測定が異常になる場合があります。現在は、補正機能が良くできていてプログラムで補正できるようです。
長年使用していると、経年劣化によるものなのか、測定値がドリフトを起こすようになります。
また、過去には、蜘蛛の巣で誤動作しましたが・・・
好みとしては、やはりマイクロ波式でしょうか。




(6)滞水池水位計

当初から、施設計画するのであれば、投げ込み式水位計より圧力式の方がメンテ上有利に思います。ただ、フラッシング時にピットに 砂分がたまります。ポンプの吸い込み管より、下に検出管を配置しないようにします。
投げ込み水位計を設置した機上で、フラッシングの際、洗浄水の水流で防波管の下部サポートが外れて破損したケースがありました。
防波管の取り付けは、頑丈にします。また砂での埋没しやすいので、洗浄対策が必要です。
取り付け位置、ゲタ履き等も検討します。




(7)ろ過水槽

ろ過水槽の構造により圧力式水位計、投げ込み式水位計が使用されます。また、最低限のバックアップとして
フリクトレベルスイッチを取りつけます。
ろ過器の制御だけであれば、フリクトレベルスイッチだけでも良さそうですが、処理停止を伴う工事や故障時等の緊急時にろ過水がどのくらい入っているかを確認するのに有用です。
原水を給水する処理水槽は、水処理水路とつながっている場合がほとんどなので、原水ポンプ等のインターロック用にフリクトを設定します。




3 水位計の校正

各水位計の校正を行う場合、ゼロ点とスパン調整を行う必要があります。
最近は、校正に専用の端末が必要な機器が増えています。このため、一部の計測器を別として端末がない機上では直営でできません。
この中で、J社の投げ込み式水位計は、変換器でゼロ点とスパン調整が行える数少ない計測器となっています。
(16 独善的な計測器評 (2)水位計)参照



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