水処理プラントの管理


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 故障・保守 (1 故障)

14 スカムスキマの故障 



1 スカムスキマの状況

スカムスキマは最初沈殿池(初沈)及び最終沈殿池(終沈)に設置されます。除去する対象物は、初沈と終沈で少し違ってきます。
(1)初沈は、下水とともに流れてくる小さな浮遊物を除去することを目的としています。
(2)終沈は、主に反応タンクで発生した活性汚泥の浮上フロックを除去することを目的としています。

原理は、表面に浮いている浮遊物を、掻き寄せ機のフライトの運転に合わせて集め、スカムパイプを周期的に傾けて下水と一緒に流し込むことにより除去します。

設備(水処理施設)(2)最初沈殿池

設備(水処理施設)(4)最終沈殿池



特段、処理場では目立つ機器ではありません。設置当初の数年間はほとんど故障がありません。かなり安定した機械です。
しかし、処理場によっては設備の増設に併せたり、更新に合わせて延べ数百台取り付けた機場もあります。
このため、スカムスキマの故障対応は、下処理場勤務したなかでも多かったのではないかと考えています。

1位 スカムスキマ
2位 雑排水ポンプ
3位 汚泥掻き寄せ機
でしょうか。

なぜこんなに多いのか。機器台数が多いので当然です。しかし、それだけではありません。
(1)スカムスキマは、設備の中では重要な位置づけではありません。
   1台故障しても、直ぐ水処理に支障が出ることもありません。
(2)1台の動作の機構が簡単ですが、直営で直せる部分がほとんどありません。
   (労力をかければ直せないことはないかもしれないが、こればかりに労力をかけられない)
   また、1台あたりのメーカー修理費用が高価です。
   その費用があれば、もっと重要な機器に回したいとの思惑が生じます。
(3)屋外や接水部に設置されていることもあり、腐食によりさらに劣化します。

自ずと、水処理設備全体の更新まで、本格的な修理がなかなかできない機械となります。
このため、何も補修されることなく気がつけば、10年以上の月日流れています。
その間、場当たり的な対処となります。

2 故障内容
故障としては、
(1)過負荷(過電流)や過トルクが大部分を占めます。
   これは、スカムパイプが無注油タイプということが一部関係します。
   パイプのメカニカルシール部の動作がシブくなるケースがほとんどです。
   しかし、シール部は水面上にあります。また、通常グリスの注油口が取り付けられたないので
   簡単にはグリスアップできません。
(2)年数が経過し、動作回数が多くなると位置決めのリミットスイッチの不良が増えてきます。
   こちらは、リミットスイッチを購入して交換すれば良いのでそれほどの労力はかかりません。
(3)やがて、駆動部の寿命期を迎えると、カラカラとギヤ部から異音がおおきくなります。

3 使用環境
スカムスキマは屋外や接水部に使用されています。
このため、降雨や下水の湿気(特に初沈は硫化水素ガスを含む)の影響を受けることになります。
(1)スカムパイプについては、初期はSSが使用されていました。塗装していても、ピンホールやがて
   ゴルフボール大の穴が開きます。
   ここまで来るとスカムスキマの機能を発揮できない。




(2)カラーがつけられている、駆動部の外筒(アウターチューブ)の腐食です。
   下水の水面に近い先端部(カラー)から腐食してきます。
   アウトチューブが腐食するとロッドとアウトチューブがくの字に折れ曲がりスカムスキマが
   使用できなくなります。









(3)スカムパイプのメカニカルシール部の無注油化
   メカニカルシール部分は掻き寄せ機に合わせてグリス注油されていました。
   しかし、掻き寄せ機の主務チェーンの樹脂化に合わせ集中給油装置がつけられなくなると
   スカムスキマも無注油タイプとなります。
   このため、設置後、数年後から駆動部の過トルクが発生するようになります。




4 故障対応

故障対応は限られます。
まず、グリスアップできる箇所には再度行います。
次に、開時に過トルク(過負荷)が発生する際は、開リミットの位置を少し手前に調整します。
また故障が発生します。
また少し手前に設定します。また、手前に設定します。やがて、スカムを飲み込みできなくなります。
何台か発生し、どうしようもなくなると最終手段で、池を空にして仮設足場を組みスカムスキマに何とか注油できないかを検討します。
それでも、何ともならない場合は、いよいよ修理工事を計画します。
スカムパイプの腐食もピンホール以外対応できません。(修理工事へ)

大事です。たかがスカムスキマ。されどスカムスキマ。




5 環境対策

(1)スカムパイプ
   パイプについてはステンレス製に変更され、さすがに腐食することはなくなりました。
(2)駆動部
   電動機、ギヤ部は屋外カバーにより腐食進行を抑えらえます。
   インナーチューブ(ロッド)はステンレス製でこちらは腐食はありません。
   アウトチューブについては、耐水性の熱収縮チューブなどで養生する。
   (思いつきませんが、世の中には紫外線に強いもっといいものがあるかもしれない。)
(3)無注油ではなくグリスアップができるように注油配管を必ず設置しましょう。
   幸い、近年は取り付けられたものを確認しています。

6 長期に持たせるために
目標は大きく、20年以上(メーカー泣かせ)を設定します。このため、
(1)駆動部のアウターチューブはなんとしても腐食を止めたいので腐食対策を確実に行う。
   この部分をステンレス製としてほしい。
   (素人です。駆動部との取り付け部の異種金属の電蝕の影響は不明)
(2)スカムパイプはステンレス製とします。(現状、対応しています。)
(3)設置後、3~4年でブレーキ付きのものは解除します。
   このくらいのスピードと精度ではブレーキは必要なし。固着・摩耗防止のため。
   (メーカーさんすいません)
(4)駆動部の定期的なグリスアップは当然
(5)スカムパイプのシール部へのグリスアップも定期的に、
   と書きましたが、やはり数が多くなると定期的なグリスアップが難しくなります。
   このため、長期を考えると系列毎のスカムスキマ専用の集中給油装置の設置は必須です。
   (20年目標です。集中給油装置を設置した場合、配管類、分配器(防雨対策実施)
   もステンレス製でないと整合性が取れません。)







(6)更新した系列の使えそうなスカムスキマ(駆動部)を中古予備品として保管しておく。
   (過去の修理はこれで助かりました。)





以上は、あくまで個人的な感想です。人により、経験値により答えが変わるかもしれません。



危険!

故障調査時の話です。
スカムスキマの過トルクの調査のため

「機側」モード

にしただけで駆動部の手回しを実施しました。

ところがスカムスキマの中立位置がはずれた途端、電動機が動きハンドルが逆回転のあと、かなり離れた場所に飛び、終沈の底に沈みました。
危うく大けがしそうになりました。



「機側」モード、電源を「OFFにする」の基本原則

を手抜きしたためです。

言い訳すると、この系列だけ、増設時に、機械メーカがシーケンスを作製していました。
このため「機側」モード時の考え方が浸透せずスカムスキマの中立位置がずれると元に戻す制御となっていました。
電機メーカーが作製したこれ以外のスカムスキマのシーケンスは「機側」モードで動作することはありません。
何はともあれ、機械に触れる際は、電源を切りましょう。
(なお、例にあげた駆動装置は、安全リミット付きです。ありがとうございます。)

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