(2) 最初沈殿池
下水の処理系で一番最初に下水が流入します。主に下水に含まれる汚泥を沈殿させ、浮遊している小さなゴミの除去を行います。
沈殿した汚泥をゆっくり前方のピット内に掻き寄せ機を用いて集め、初沈汚泥ポンプで引き抜き、次の汚泥処理系へ移送します。
浮遊しているゴミの除去は、スカムスキマで定期的にすくい取るようにしています。
|
(1)腐食対策
設備上、腐食ガスが発生しやすいので、機器の部材・コンクリートの腐食対策が重要です。
コンクリート構造物は接水部より上の部分が腐食しやすく、水面下ではほとんど腐食がありません。
また、機器部材では、サポート類やチェッカープレート、配管類、電線管なども通常鋼材であれば塗装があっても
すぐ腐食します。ボルトナットを含めステンレス材(または亜鉛メッキ鋼材)とする必要があります。
(2)掻き寄せ機
掻き寄せ機のチェーンは鋳物→ステンレス→プラスチックと時代とともに変わりました。
プラスチックチェーンを使い始めた初期の頃は、「こんなんで大丈夫?」と思ったことを思いだします。
現在はほとんどプラスチック製になっています。
駆動する減速機も3.7kWの電動機を使用していたのが0.4kWになっています。
摩耗による破断はほとんど起きていませんが、点検や工事で池を排水したときに
養生ときちんとしないといけません。太陽光で劣化したり、酸性の水滴がかかると劣化します。
長期停止時は、処理水に水没させておき、定期的に運転する必要もあります。
(3)掻き寄せ機の保護
掻き寄せ機の保護装置は、シャーピンが最近使用されていません。始動トルクが大きいと通常始動で切れることが
あるようです。
このため、すべからく保護は電気側の担当(ショックリレーや過電流保護)となります。個人的な感想では、まず機械側の保護があってほしいものです。
(4)臭気対策
最初沈殿池の場合、臭気も発生するので脱臭対策が必要です。
このため、最初沈殿池の覆蓋と脱臭設備が必要になります。
ただ、覆蓋の中では機器にとって過酷な状況です。水面と覆蓋の間に設定される機器については、(1)に述べた防食対策が重要です。
(5)各設備の状況
①可動堰
一度設定すると、数が多いので手動の点検を年に1度行うことになります。それ以外では、池の休止など保守点検以外ほとんど操作しません。
ただ、池内の調査を行う際は、流入停止のために全閉にする必要があります。
材質は、シート部分のシューはSUS製ですが、それ以外SS製となることが多いために、大概固着しています。
点検に手を抜きたい設備ですが、抜くとやっかいです。
②掻き寄せ機
フライトチェーンが伸びるため、数年に一度、池を開けてチェーン、スプロケット、シュー等の点検、チェーンのテイクアップが必要です。
昔、テイクアップを池上からできるような設備もありましたが、テイクアップ部分が固着し、結局使い物になりませんでした。
③スカムスキマ
設置後、主な修理なく長期に使用されます。このためスカムパイプは腐食が発生しないようにSUS製とします。また、スカムパイプの
可動部は無注油方式となっています。
設備更新にまで持たせるため、矛盾ですが注油口があればと思います。また、作動用のインナーチューブ(ロッド)用のアウターチューブが
初沈の覆蓋内でよく腐食します。塗装の厚塗りではなく密着するカバーがあれば腐食対策になくなるとは思います。
④初沈汚泥ポンプ
1)汚泥ポンプの駆動方式
直結式、ベルト掛けがあります。
配置上の制約から、ベルト掛けになる場合がありますが、管理上は直結式が有利です。配置上問題がなければ
直結式を採用すべきです。
2)ポンプの電動機の回転数
2極(2950rpm)、4極(1450rpm)が主に採用されます。
高速回転のポンプは小口径にできますが、初沈汚泥ポンプに関しては、小口径のため異物の閉塞が起きやすい。また、汚泥の砂分による摩耗による能力低下
が大きいので、4極の電動機を採用すべきでしょう。後々保守に苦労します。
3)可変速か・固定速か
(a)可変速か
規模が大きくなると回転数制御方式が有利です。
初沈の引き抜き汚泥量の調整範囲が広くできることと、各系列の初沈汚泥配管が共通になっていても各系列の引き抜き流量バランスがとれます。
(b)固定速か
小規模の場合、設備費用が少なくできます。
固定速で1池の引き抜き時間が短時間の運転になる場合、詰まりやすくなる場合も想定されます。
ポンプが固定速で全速運転(特に2極)の場合、ポンプのケーシング、インペラ等の摩耗が進行します。
また、各系列の初沈汚泥配管が途中で共通になっている場合、各汚泥ポンプが同時起動すると一時的に流量が低下する系列がでる可能性もあります。
4)回転数制御方式
渦電流継手方式とVVVF方式が使用され、特に、初沈汚泥ポンプは渦電流継手方式が採用されてきましたが、時代ととともに製造メーカで製造されなくなったため
現在はVVVF方式一択となっています。
個人的には、渦電流継手方式が好きです。制御回路がシンプル、高調波も少なくて30年近く動いている電動機
(軸受けは交換)もあります。効率はVVVFに劣りますが頑丈さが捨てがたいです。
5)メカニカルシール機構
メカニカルシールには注水タイプと無注水タイプが使用されています。現在ほとんどが無注水タイプとなっています。
どちらも長所と短所があります。
注水タイプのメカニカルシールは、エンドシールの摩耗に伴い漏水が発生しますが、エンドシールの調整または交換することによりそれほど労力をかけずに保守ができます。
ただし、シール水の管理が必要でシール水断水が発生するとポンプが運転できません。
無注水タイプの場合は、日頃の保守はいりませんが、一度漏水が発生するとポンプを分解しないと修理ができません。
メカニカルシールの状況からポンプの劣化状態は予測できないため、運転時間による予防保全が必要と思われます。
漏れるまで使用するという事後保全の考え方もありますが、容量が大きくなると直営での修理ができなったり、部品の手配・購入に時間を要するため
計画的に行うべきでしょう。
⑤初沈汚泥引き抜き弁
弁体としては、偏心構造弁が使用されます。初沈の引き抜きは全開・全閉で使用され、途中開度はありません。故障が少なく長期に使用されます。このため
劣化として、弁体内腐食やシールゴムの硬化・摩耗が発生します。また、上部のシール部からの汚泥漏れ、リミットスイッチの不良が発生するようになります。
この、時期になると、シリンダー内のシールも劣化しているので15年を超えないように更新工事を計画します。
汚泥掻き寄せ機
|