11 液体抵抗器
高圧電動機の起動、回転数制御で主流であった液体抵抗器。また汚水ポンプで多用されていたセルビウス制御方式
は、もはや主流ではなく、VVVF方式に移行しつつあります。
しかし、現在、処理場には数多くの液体抵抗器が保有されています。構造が簡単なため、今後も保守が続けられてななか更新できないと思います。
今後は、汚水ポンプについては、VVVF方式が増加すると思いますが、
(1)高価である。
(2)電子部品の塊で構造が複雑である。
(3)電子部品が多様されているので製品寿命も液体抵抗器に比べ短い。
(更新時期までに電力回収等投資が回収できない可能性がある。)
(4)VVVF駆動の電動機にかご形電動機が使用され、故障時のバックアップ起動ができない。
(液体抵抗器が故障しても、巻き線型電動機を使用しており、純手動の起動が可能である。)
(5)高調波の発生が多い。
(最近のVVVFは高調波対策ができているが、高価)
等の欠点があり、全てにとって変わる訳ではないと思います。ただ、液体抵抗器のメーカーの製造意欲は減退しています。
液体抵抗器(例 1750kW電動機用)
項目 |
三菱 |
日立 |
東芝 |
西原環境衛生 |
外形寸法 |
W1350×H2400×D1730 |
W1300×H2300×D1600 |
W1170×H19500×D1550 |
W1800×H2300×D1200 |
重量(液なし) |
1300kg |
1800kg |
720kg |
1800kg |
電解液 |
1550L |
1400L |
860L |
600L |
冷却水量 |
200L/分 |
500L/分 |
280L/分 |
510L/分 |
駆動容量 |
0.2kW |
0.4kW (油圧ポンプ) |
0.4kW |
0.4kW (コンプレッサ) |
駆動方式 |
電極可動式 (モータ) |
電極可動式 (油圧) |
電極可動式 (モータ) |
電解液可変式 (空気圧) |
外部制御信号 |
正逆パルス |
4~20mA |
正逆パルス |
正逆パルス |
インチング運転 |
サーボの正逆 (ギヤあり、頻度注意) |
連続可 |
サーボの正逆 (ギヤあり、頻度注意) |
連続可 (電磁弁の開閉) |
インチング運転 |
サーボ(又は電動機) の正逆(ギヤあり) |
連続可 |
サーボ(又は電動機) の正逆(ギヤあり) |
連続可 (電磁弁の開閉) |
動作時間 |
約26秒 |
15~60秒 |
30~40秒 |
約2分 |
循環ポンプ容量 |
1.5kW |
1.5kW |
0.75kW |
1.5kW |
2次短絡用 |
2ノッチ (コンダクタ方式) |
3ノッチ (カムコン方式) |
7ノッチ (カムコン方式) |
2ノッチ (コンダクタ方式) |
製造状態 |
製造中止 保守のみ |
この方式は製造中止 保守のみ 日立・東芝共用(OEM) |
日立・東芝共用(OEM) |
製造中止 保守のみ |
1 液体抵抗器の設計例
(1)仕様
電動機 1750kW
同期速度 300rpm
定格2次電圧 2300V
定格2次電流 465A
定格スリップ 1.90%
(2)負荷
雨水ポンプ用
(3)速度制御範囲
70~100%(205~285rpm) 同期速度比(66.5~95%)
(4)計算
①100%R
R100=E2/(√3×I2)=2300V/(√3×465A)=2.856Ω
②電動機回転子抵抗 r0=0.055Ω/相
③液体抵抗器の必要抵抗
最小抵抗値 RLmin=(R100×S1)/(1-S1)-ro=2.856Ω/(1-0.05)^2-0.055Ω
=0.1032Ω
最大抵抗値 RLmax=(R100×S2)/(1-S2)-ro=2.856Ω/(1-0.335)^2-0.055Ω
=2.1085Ω
抵抗比 K=RLmin/RLmax=2.1085Ω/0.1032Ω=20.4倍
④冷却容量
最大2次損失
PLmax=0.148×P(S=33.3%)=259kW
冷却容量 260kW
⑤液温上昇
θ=860×PLmax/(K×F)=860×259kW/(1100×10)=20.2℃
K=冷却器の熱伝導率1100kCal/m2・H・℃
F=冷却器の伝熱面積 10m2
2 分路用抵抗器の動作頻度
運転方式
(1)速度運転制御方式から2次短絡運転へ切り替える場合は、分路抵抗に負荷抵抗が流れる。
(2)2次短絡運転より、速度制御運転へ切り替える場合は、負荷電流は流れない。
2次短絡運転時は、88-1、88-3がONとなっており、速度運転時への切替時は88-1を
OFFすることにより分路抵抗へは電流は流れません。
2次側短絡時の突入電流(分路抵抗を設けない場合)
液体抵抗器の抵抗値最小位置から短絡した場合、約156%の先頭電流が流れます。
I2P=α×I2×(r0×r1)/r0
=0.98×I2×(0.055Ω+0.0326Ω)/0.055
=1.56×I2 A
r1=(R100×S2)/(1-(S2-S1))^2-r0
=(2.856Ω×0.03)/(1-(0.03-0.019))^2-0.055
=0.0326Ω
3 分路抵抗器の使用頻度
20分に1度の繰り返し使用可能
液体抵抗器の改善案
VVVFが主流になりつつある現在では、やや陳腐に思える液体抵抗器です。
しかし、容量の大きい雨水ポンプで可変速が必要な場合にVVVFではコスト的に合いません。
また、雨水ポンプは、確実に排水を行わなければならない設備です。
現在、VVVF用電動機にかご形が主に使用されておりVVVFが故障した場合に、起動するすべがありません。
この点で、まだ液体抵抗器が生き残る場所があるように思います。
注
VVVF用電動機にかご形が採用される主な理油
①ブラシ清掃等のメンテナンス性が向上し、構造上堅牢。
②既存の巻線型電動機をVVVFに変更する場合、スパイクノイズ等の耐圧を考慮していない。
最新のVVVFは改善されているが、巻線型はスパイクノイズに弱い。
③電動機の製造コストは巻線型に比較してかご形が安価である。
液体抵抗器は、原理的に簡単な構造なので次のような構成でも
いいのでは、と考えています。(開発会社募集中)
(1)案1の液体抵抗器の動作
①排水電動弁を開くと準備完了水位(起動水位)まで低下します。
②起動時、排水電動弁を閉じて、給水電動弁を開けると増速します。
③定格運転位置で給水電動弁を閉じます。
④速度を下げたい場合は、排水電動弁を開けます。
⑤目標の回転数になれば、排水電動弁を閉じます。
⑥増速する場合は、給水電動弁を開けます。
⑦水位の上げ下げで、上部のタンクの液位が低下した場合
下部のタンクから電解液をポンプで規定液位まで揚水します。
⑧電動弁は基本的に、水位計で動作しますが、壊れても起動でき、オーバーフローし電解液が
循環するだけ、停止時は強制的に排水電動弁を開けると準備完了水位となります。
(2)この液体抵抗器の応答性を上げるための考慮点
①水量を正確に行いたいため電動弁は、高速開閉ができること
なお、電磁弁は動作が速いが信頼性に欠けるため使用しない。
②電解液給水・排水管のサイズは太くします。
ただし、最大流量で給水して、負荷が増えても電動機に過電流が発生しない口径とします。
③電解液の給水は波打ち防止のため底部から給水します。
④電解液の上部補充タンクは、深いと水圧変動で流下量の変動が大きく
なるので浅く、面積を広くします。
(3)案2の液体抵抗器の動作
①排水電動弁を開くと準備完了水位(起動水位)まで低下します。
②起動時、排水電動弁を閉じて、ポンプで液位を上昇させると増速します。
③定格運転位置でポンプを停止します。
④速度を下げたい場合は、排水電動弁を開けます。
⑤目標の回転数になれば、排水電動弁を閉じます。
⑥増速する場合は、またポンプで水位を上げます。
(4)案1と案2の比較
案1がいいと考えていますが、設置場所を選ぶため、信頼性がやや劣りますが、
次の案2の方式でもよいと考えます。
電極固定式では、西原環境衛生(株)の液体抵抗器で「フローマッチャー」との名称がありますが、
コンプレッサによる加圧して液位を変化させており、この案より複雑な制御を行っています。
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