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8 点検作業雑感
作成 2026年 2月19日付
見えない仕事で、社会は動く
「1 故障の検討」
のなかでドイツ人と日本人の話を出しました。この話としてはステレオタイプといわれる話です。
当然全てのドイツ人、日本人に当てはまるモノではありません。
ただ、私たちが点検作業を行う際、往々にして「規則で決まっているから」とか「点検項目にあるから」となります。
しかし、本来の基準なり、点検は設備が継続的に安全に運転できるように行うものです。
単に「決められた項目を消化する」ことと、「安全運転を維持するために診断する」ことでは、その意識の差が結果に大きく違ってきます。
設備が正常で安全に運転されるためには、点検→運用→点検(不具合)→修理→運用のサイクルがなければなりません。
ニュースでエレベータの点検後に事故が起こったりするのが散見されます。
原因は点検したけれど不具合を放置(点検者・管理者どちらか)したために事故が発生したりします。
基準や点検が安定運転に寄与せずないがしろにされているケースです。
大手自動車メーカーの自動車の量産に必要な「型式指定」を取得するための性能試験で不正を行っていたり、ディーラーにおいて、不正車検が行われたりします。
大手電気メーカーの鉄道車両向け空調装置においての長期に亘る不正検査もありました。
大手メーカーによる鋼材検査における品質データの改ざん・捏造というのもありました。
過去を振り返ればまだまだありますが
この辺の製品についての点検・品質管理は、現場の作業者(ヒアリングしていないが)が根底に「無駄な点検」との認識を持っているとの感じがします。
作業員が無駄と感じる点検・試験は業界で協議して、国に簡素化を要求していくべきなのが本筋でしょうか。
深刻な労働力不足の時代において、不合理な作業を漫然と続けることは、労働生産性を著しく阻害します。
点検作業は、新設工事のように「ゼロから形を作る」作業ではありません。
そこにある機器の健康状態を診断し、消耗品の交換や修理計画を立てる「予防医学」のような仕事です。
このため、ものつくりの技術者より点検作業員は低く見られがちです。
また、工賃は安く設定されているのが現状です。
上下水道システム、ダムシステム、電力インフラ(原子力含む)、ガスインフラ、石油プラント、鉄鋼プラント、飛行機システム、船、自動車、鉄道システム、道路システム、通信インフラ、
ビル管理などなどありとあらゆる設備で点検を必要としない設備はありません。
世の中はAIばやりですが、この分野は未踏の分野で自動化もなかなか進みません。効率化できない手間が多数あります。
多くの作業員は、その中でガンバっていますが、なかなか評価を上げてはくれません。
効率化の中で、「早く・多数を」のかけ声のなかでの点検作業は、作業者を疲弊させ手抜きが発生する素地がでてきます。
それでも毎日続く作業を「単純な点検チェックシートに記入する仕事」にしない。
この認識を持ちつづけることが保守技術者の矜持であることは理解していています。
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