5 プラント管理者の経験値
技術のバイアス
長く下水設備の維持管理を行っているといろんなトラブルや事象に遭遇します。この結果として、
それが自分の失敗や苦労に関連すると、経験値としてその失敗や苦労に極端に反応することになります。
このため、管理担当者として設計者との設計協議を行った際、設計時に当然考慮すべき事項として設計基準があります。しかし、基準以上にバイアスがかかった考え方(こだわり)になってしまうケースがあります。
こだわりとは有用な経験であったり、先取りした考えであったりしますから設備計画において必ずしも有害ではありません。
しかし、費用や、時間が限られている計画のなかで、それをどうしても実現したくなると結局、設備計画全体のバランスが崩れる
こともあります。
プロジェクトに多くの人が参画する計画では、発言力の大きさにもよりますが、たぶん全ての最適解を求めると設備は設計できなくなるような気がします。
例えば
一度泥棒には入られると、家に入るのに面倒なぐらい鍵をいくつもつけたくなります。
コストも考えず警報器・防犯カメラ等の防犯グッズもつけたくなります。
当直した大雨の夜勤で発電機の同期装置が故障し、同期がとれず、結果的にポンプに電力が供給できず浸水してしまった場合は、
その後の設備設計では同期装置がない仕組みを追いかけたりします。
新設の場合の設計はそれほど困難では有りませんが、既設の更新工事でとなるとそうたやすいことではなく、さらに問題を複雑化してしまう場合もあります。
大きな社会問題として当てはめれば、現在でも原子力発電所が稼働できないのは、たぶんこの状態に陥っているよう思います。
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設計満足度70点とは設計者が仕事を長く継続するのに必要な要素です。
(技量と経験にもよりますが、いきなり100点を目指すと燃え尽きる)
ただし、「私の提案」は是非採用してほしい。
このホームページもこの経験値から作成しています。このため、長年携わったとはいえ「普通のプラント管理者」のバイアスが掛かった状態にあります。
後悔としては、問題が発生したときに関連文献を漁り、技術的に考えをまとめてバイアスのかけ方を検討しておく必要があったように思います。
それでも経験上重要なことはプラント設計・施工で「長期に亘る維持管理」に少しでも考えをはせることが良き設計に通じると思っています。
ただ、維持管理の障害を先回りして検知できれば良いのですが、後輩たちの設計をみているとまた同じ道を最初から歩んでいるように感じます。
(技術は伝承されない)
たぶん失敗(実際の体験)してみないと見えないものもあるように思います。
願わくは、大きなバイアスにならないことを祈ります。
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