20 機側盤(現場盤)あれこれ
1 機側盤の構成
機械設備を現場で操作できるように機側盤(現場盤)が設置されてます。
対象とする負荷(動かす機械)の数やスイッチや計器の配置、収納機器の制約、コストから以下のタイプが選択されています。
壁掛け型、スタンド型、自立型の3種類です。
盤のスイッチの配列等は、対象機器の用途別により構成します。
機側盤は、現場で機側運転ができる構成でなければなりません。
このため、機側盤に取り付けられる基本的なものとして、
(1)機側盤面のスイッチ類
盤面の操作スイッチ類には、以下があります。
①運転・停止
②機側・常用
③予備機がある場合は、先発切り替えスイッチ
④運転停止状態がわかる表示灯
⑤機側連動・機側単独(設備により)
⑥非常スイッチ(必要な機器)
盤面に全て取り付けられますが、機器の補助的に使用されるものは盤内に取り付けられることもあります。
例えば、シール水が必要な汚泥ポンプの場合、運転・停止スイッチにては盤面に取り付け。シール水の
電動弁の開・閉は盤内ということがあります。
全て盤面の方がわかりやすいのですが、コスト面等で盤内収納のケースもあります。
機側操作は保守点検以外に、通常運転できない状態を想定しているため現場でわかりやすく、誤操作が起きにくいことを考慮します。
(残念ながら緊急時に汚泥ポンプを機側運転した際、
シール水弁を開けるのを忘れて短時間?運転したことがあります。)
運転停止のスイッチには、CSスイッチ方式と押しボタンスイッチ方式が有ります。どちらもなれると操作性は変わりませんが、同一処理場で統一的にすべきと考えます。
非常停止スイッチを取り付ける場合は、その役割から「スイッチを引いたり、ねじったり、押したり」など、
どの操作を行っても機能するスイッチを取り付けます。
また、誤操作防止のため色替え、簡易カバー、かるく触れただけでは動作しないなど工夫をします。
運転・停止の表示灯は、白熱ランプが多く使用されていました。かなりの頻度で切れていました。点検時に、ツールボックスに何個か予備のランプを入れて持ち歩き
、交換をしていました。現在は、LEDランプが採用されるようになり更新した機側盤は交換作業はなくなりました。
(2)電流計等
電流計は連続運転する三相機器には必ず取り付けます。
システムによるのですが、ケーブル等を含めコストアップの要因ですが、管理をしていく上で
重要です。
ゲート類、バルブやスカムスキマーなど短時間動作機器でコントロールセンタに電流計がつけられる場合は省略するケースもあります。
保守管理上は三相機器は全てと思いますが、コストを考慮すると重要度において取捨選択があるかもしれません。
その他の計器として、機側運転を行うために必要に応じて流量計、回転数計、開度計、水位計等を取り付けます。
(3)盤内収納機器
フロートレスリレーユニット、速度制御機器(VSモータなど)、ポテンショメータ(VVVF用)などが収納されます。
(4)盤内灯
盤内の点検に必要。特に盤内に制御機器を収納している場合は、点検作業が増えるので必要です。
(5)盤内コンセント
コンセントは、通常機械設備の点検用の照明や測定器、容量の小さい電動工具の使用を想定して取り付けます。
備えられてると、重宝します。
コンセント電源への給電は、同時に使用されることがほとんどないので機側盤のグループごとの給電となります。
(6)盤の環境対策
下水設備は湿度が高い場所が多いので盤内にヒータを取り付けます。また屋外で直射日光にさらされて高温になる場合は、遮蔽板を外側につけます。
盤内に収納機器がある場合は冷却のため換気ファンを取り付けることがありますが、難点として雰囲気の悪い外気を取り込むため、腐食の進行が考えられます。
なるべく電子機器は、現場に置かず、高温・雰囲気にさらされない電気室や雰囲気の良い場所に設置することを検討します。
ただ、悩みどころとしてシステム構成によっては逆に不便になる場合もあります。
雑排水ポンプの制御に使用するフロートレスリレーなどは機側盤内に取り付けた方が
シーケンス試験を実施して現場確認が行えるので便利であると言えます。
また、機側運転で回転数制御が必要な場合は、機側盤内に制御機器(VSモータ制御機器を含む)
を収納することになります。
2 機側盤の配置
機側盤の配置については、機器が確認できる場所での操作となります。
自動運転時は、人が介在することがありません。このため、機側盤の配置は関係ありません。
しかし、機側運転時は違います。
機側運転時は人が点検で機械に触れていたりしていないか。また、作業中でないか等の確認が条件だからです。
このため、機側盤のスイッチのならびと盤の設置場所は操作員の視線や動線を意識し、
人間工学的に間違いにくい工夫を行います。
ただ、当初設置を計画したベストな壁面には配管類、歩廊など先約がいて、壁掛け型が取り付けられなかったり、
自立盤を置くスペースに配管サポートの柱が陣取っていたりします。
プラントの電気設備工事はいつも最後の工事となるのでいつも割を食います。それでも、
設計段階でプラント機械の歩廊上などに設置する場合もあるのでよくすりあわせを行っておくことが重要です。
打ち合わせで、「機側盤はどこでもおけます」などと公言しないこと。
機械の号機番号は、左から右が標準ですが、機器の配置と矛盾が出ないよう合わせます。
スタンド型、自立型は壁掛け型よりは据付場所に困りませんがコストが高くなります。
壁掛け型は、コスト的に安くなりますが機器に対して据付場所の自由度が低く配置の制限があるので
よく検討して採用します。
過去に、取り付け場所に困り、施工メーカーにお願いして壁掛け型にアングルでスタンド台を製作してもらったケースがあります。
壁掛け型でも視界に無理なく配置できれば問題ありません。号機のならびは配置に合わせます。
3 機能操作優先
自立型の盤で負荷数が多い場合は、どうしても視界に支障があったり、動線を確保するため負荷によっては逆向きの配置になったりします。
負荷分けも考慮できますが、コスト面と設置スペースが限られる場合に悩むかもしません。
設計には妥協が必要かもしれません。
(1)汚水・雨水ポンプなど連動負荷が多い機械は負荷分けすると自動運転では問題ないのですが
保守点検や緊急時の運転時に操作に困難が伴います。
(2)連動を伴わない機械は、自立盤に集約せず、名前の通り機側盤にした方が良いでしょう。
4 浸水対策
(1)沈砂池設備では、長いプラントの管理運営では水没することが当然と考え対策をとっておくことが重要です。
(沈砂池設備編や既存設備の浸水対策確認)
(2)管廊などで一段深い場所に雑排水ポンプが設置されている場合、長い歴史の中でポンプが故障し水没することもあります。
機側盤が水没しなければ、雑排水ポンプの修理復旧が容易になりますが、機側盤が水没するとそのようにはいきません。
5 照明の配置
機側盤の配置を最適にしたのですが、照明が最適ではありません。
管廊や設備配置の影響で照明がうまくありません。
施設の工事は、土木工事→建築工事→建築機械工事→建築電気工事→プラント機械工事→プラント電気工事と進みます。
プラント電気設備は最後になります。照明は、機械の配置変更を考慮できていません。
この辺は、照明の微調整か追加か。面倒を見るのはプラント電気設備か?
6 機側盤(現場盤)の将来
以上、現状のリアルな機側盤を検討してきました。
ただ、将来的(そう遠くない時期)には、機側盤がなくなっているかもしれません。
機側運転したい時に「機側機能が付いたタブレット型PC」を現場に持ち運び、機側操作が行える時期が直ぐにも来るかもしれません。
たぶん、コストダウンの波はC国からか、それともEマスク氏あたりからやって来るのでしょう。
そのとき、現状の考え方を踏襲すべきだとか安全性はハードでなければダメだとも言えなくなるのかもしれません。
個人的には、機側盤はプラントの最後の砦みたいなものと考えています。
実のところ、この機側盤を設けないシステムを25年以上も前に水処理設備の増設時に実証実験を行った優秀な技術屋の大先輩がいました。
当時は、無線でやりとりしていたように聞いています。(端末で機器を選択できたそうです)
やはり信号の信頼性等に課題があったのか、操作性に問題があったのか不明ですが普及することはありませんでした。
この大先輩は時代を先取りしすぎたのかもしれません。
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現状と同じハード構成してほしい理由は、
①イノベーションのスピードと下水処理場の制御機器の更新スピード(更新予算が付かない)がマッチングしていないことによります。
現状のデジタルシステムでは互換性は維持されますが10年がマックス(もっと短い)
の更新サイクルを維持する必要があると思います。
下水処理場の製品(処理水)が商品として販売できれば別ですが、この製品はいかに安く自然に帰せるかが命題になっています。
リアルな機側盤は、時に30年以上の耐用(もっと長い設備も)があります。
②個人の考えとして、電気の信頼性と安全性は電波とソフトに起因してほしくないとの思いです。
ただ、現状の思いとは別に、勢いを増して変化していくな気がします。
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