水処理プラントの管理


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 故障・保守 (3 保守)

3 高圧電動機の養生


安全のための養生が危険な養生に

下水処理場で使用される汚水ポンプ、雨水ポンプ等は定期的に オーバーホールを行うに必要があります。工事期間は概ね4~5か月程度となります。
その際、ポンプ等の修理工事では、高圧電動機などの電気的な養生が必要になります。

たとえば、汚水または雨水ポンプの修理工事に伴う電気的な作業は、以下の主な作業を行います。


(1)本体の高圧電動機の高圧ケーブル取り外し
(2)補機類の低圧動力ケーブル取り外し(修理範囲により)
(3)各センサー類の制御ケーブル取り外し


となります。



高圧電動機のケーブル類は取り外す前に以下の作業を行うことになります。
これなりついては、電源を切るのはもちろんですが、 高圧盤内で接地などを行うことになります。

その実例としては以下のような養生を行います。


(1)対象負荷を停止状態にします。
(2)対象負荷の制御モードを補機を含め「手動」・「機側」にします。
(3)対象負荷の高圧盤で高圧コンビネーションスタータ(VCS)が切れていることを確認します。
(4)高圧盤内のVCSを挿入位置からテスト位置に引き抜きます。
  ①高圧盤裏面の扉、保護板を外します。
  ②負荷への給電ケーブルの検電を行います。
  ③給電ケーブルの放電、接地を行います。
(5)補機の低圧電源を「OFF」にします。
(6)シーケンスを確認し各センサー類の制御電源を「OFF」にします。

以上の作業が行われれば、高圧電動機の端子の取り外しが行えるようになります。
内容は労働安全衛生規則によるものでもありますが、作業が危険なので規則以前に十分注意する作業ではあります。




労働安全衛生規則より


(停電作業を行なう場合の措置)
第三百三十九条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電 気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じな ければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事 の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解 体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。

一 開路に用いた開閉器に、作業中、施錠し、若しくは通電禁止に関する所要事項を表示し、又は監視 人を置くこと。

二 開路した電路が電力ケーブル、電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずる おそれのあるものについては、安全な方法により当該残留電荷を確実に放電させること。 三 開路した電路が高圧又は特別高圧であつたものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、 誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具 を用いて確実に短絡接地すること。

2 事業者は、前項の作業中又は作業を終了した場合において、開路した電路に通電しようとするときは、 あらかじめ、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのないこと及び短絡接地器 具を取りはずしたことを確認した後でなければ、行なつてはならない。




写真

この作業で、問題になるのが高圧盤の構成です。上記のように1組が組み込まれた高圧盤では特に 問題は有りません。
しかし、2段積み、3段積みの構成になった場合には養生は単純ではありません。

理由としては、工事期間中に盤内の電源を全て落としておくことができないからです。
一部、充電した盤内で接地器具を布設したり、接地したままにしておくことは非常に 危険です。



養生作業の進め方としては、


(1)作業手順書を電気主任と協議して作成します。 (以下はこれに則り作業を行う)
   
(2)3段積み負荷となっているプラントを全て停止し、 VCSの切り離しを行います。
これにより、作業安全エリアを作ります。
   
(3)高圧盤内の3台のVCSを挿入位置から テスト位置に引き抜きます。
①高圧盤裏面の扉、保護板を外します。
②負荷への給電ケーブルの検電を行います。
③給電ケーブルの放電、接地を行います。
④接地器具は他の負荷の充電部に接触することがないように、

「仮設の耐電圧ゴムシート等で養生」

します。


(4)作業後、施工以外のVCSを挿入し、 負荷を通常状態に戻します。























このように接地器具に対する養生を行います。













ところで、
ポンプの修理工事は「機械設備の工事」となります。作業調整は、主に「機械担当者」が行います。
作業は当然、機械メーカーが主体となります。このため、電気的には詳しくありません。
ここで、機械担当者と電気担当者がコミニケーションが不足していると電気関係の養生について電気担当者が 状況を把握していないケースが生じることとなります。

写真


施工前日になって機械担当者(コミニケーション不足の人)から、「次の日から工事に入るので電気的な養生で立ち会いをお願いします」 といきなり連絡が来ます。

検討するまもなく、次の日、電気担当者は作業内容を飲み込めぬまま、機械メーカーが来場して「安全衛生規則」による接地を要求してきます。

しかし、
(1)接地器具等の取り付けで盤内の全ての
VCSを落とす必要がある。

(2)停電に伴う調整していないので、プラントへの影響が大きく直ぐにはできない。

(3)機械メーカーは接地することだけしか想定
していないので仮設の耐電圧ゴムシート等の作業準備をしていない。


状況になります。
このケースで電気担当者は、


以下の判断を要求されます。
(1)作業を延期し、再度調整を行う。
(2)他の電源供給に注意して給電部に接地器具を取り付ける。
(3)給電側の接地器具取り付けをやめる。
ことが考えられます。







工事関係者が準備で大勢来ています。延期はなかなか言えません。
悩んだ「電気担当者」は、(3)を選択しました。
機械メーカーは、給電ケーブルの接地を規則通り要望していきましたが、接地器具の取り付けに付いては理由を説明し 取り付けをやめてもらいました。

理由として、


①充電部が近い盤内での接地器具の扱いは非常に危険であると判断し、接地は取り付けない。
②検電は、交直両用の検電器を使用する。
③高圧電動機の結線を外した後、電動機側で接地する。







ことにします。

最大限注意しているとはいえ、規則違反です。
盤内の作業は全て無電圧で行うことにも反します。
(絶縁抵抗の測定)

反省点です。

このケースでは、本来は、「安全衛生規則」の趣旨からは延期して「再度養生について打ち合わせを行う」べきだと今では思います。
幸い、事故はありませんが、要検討事項として心にひっかかっています。

機械メーカーは、こちらで何も指示がなければ、段済みに関係なく接地器具を盤内に

機械的に取り付けているような 雰囲気がありました。

このような作業をいつも行っているような感じ受けました。(あくまでも個人的な感想)

「ダメなものはダメ」

を意識し、その場を仕切ることも必要です。
その場の雰囲気や機械メーカーの多くの作業員を意識して流される担当者が出ないことを祈ります。


また、当然ですが、養生まで含めた「事前打ち合わせと現地調査」 を電気担当者を交えて実施しておくことが重要です。


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