水処理プラントの管理


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  設備 (受変電・自家発設備)

10 受変電・自家発設備(自家発設備)


受電電源が停電することを想定し、処理場で必要な全電力に見合う発電設備を設置します。 停電時でも処理系、排水系が維持できるように設計しています。
また、買電ですべての電力をまかなうと契約電力が大きくなりすぎるため、自家 発電設備が併用されることとなり、排水系にとって、自家発電設備が非常に重要な設備となっています。


(1)自家発設備の種類

①ティーゼル発電設備
下水処理場の使用実績が長く、古い機場ほど使用されています。

長所
燃料消費量がガスタービン発電機より少なくなります。
通常、故障の予見がしやすく、故障した場合ほとんどの機器が現場での修理が可能です。

欠点
騒音が大きく、防音対策、消音器が必須です。
起動時に黒煙等が発生しやすく周辺が都市化されてくると煙害が発生します。
冷却水に伴う、補機が多く長期使用では内部腐食伴う故障が多くなります。


②ガスタービン発電設備
近年、導入が進んでいます。

長所
ディーゼル発電設備に比較して必要な補機が少なく、通常の保守点検が軽減されます。
燃焼が一定で起動時も煙害が少なくなります。

短所
燃料の負荷変動による消費量の変化が少なく、燃料消費が多くなます。ディーゼル発電機に比較して大容量の 燃料貯留量が必要となります。
また、故障した場合、現場での修理が限られ、ユニット毎の搬出し長期の修理となります。
メーカーでは、代替え機を用意するなどの対応を行っていますが、コスト的には負担が大きくなります。



ディーゼル発電設備とガスタービン発電設備の比較

  番号 項目 ガスタービン発電設備(G) ディーゼル発電設備(D) 優劣
G D
性能 速度変動率 瞬時・定常時とも小さい、整定時間も短い。 瞬時・定常時とも小さい、整定時間も短い。  
(1)瞬時  ±4.0%(100%負荷投入時) (1)瞬時  ±10.0%(60~70%負荷投入時)
(2)正常時 ±0.3% (2)正常時 ±5.0%
(3)整定時間 2秒以内 (3)整定時間 10秒以内
瞬時過負荷 慣性力大のため瞬時過負荷耐量、大 慣性力 小  
原理 連続燃焼、タービン回転運動 間欠燃焼、ピストン往復運動  
減速機を介して発電機を回転、トルク変動なし クランク軸を介して発電機を回転、トルク変動あり
寸法、重量 小型、軽量 大型、重量  
構造 構造単純、部品点数少 構造複雑、部品点数 多  
冷却方式 自己空冷方式 水冷方式  
負荷投入率 100% 電圧確立後即時全負荷投入可 60%~70% 寒冷地暖機運転 要  
(力率1の場合)寒冷地でも暖機運転不要 (力率1の場合)過給程度に応じ、暫時負荷投入
起動時間 停電検出から電圧確立まで40秒以内 停電検出から電圧確立まで40秒以内  
  (プレヒーチング時は10秒以内 可)
低温対策 燃料系の簡単な加温のみで対応可能 冷却水・燃料・潤滑油系全体の加温が必要  
    灯油であれば-25℃まで加温不要 冷却水凍結の恐れあり。  
10 騒音 高周波・低振動 85dB (A) (機側1m) 低周波・高振幅 105~115dB (A) (機側1m)  
11 振動 高速回転運動・振幅小(軸トルク変動なし) ピストン往復運動・振動大(軸トルク変動あり)  
動荷重=静荷重×1.1倍 動荷重=静荷重×1.5倍
12 排ガス NOx=80~150ppm NOx=500~1000ppm  
SOx=80~110ppm SOx=100~200ppm
13 排ガス量 ディーゼルより大 ガスタービンより小  
14 耐震性 冷却水設備不要、特別の耐震対策不要 冷却水配管破損、防振台の地震との共振の恐れあり  
15 燃料 灯油、軽油、A重油、天然ガス 軽油、A重油  
16 無負荷運転 無負荷長時間運転可能 無負荷長時間運転負荷(カーボン堆積のため)  
17 潤滑油プライミング 不要  
建設費 設備価格 ディーゼルに対し110%~120% 100%  
付帯設備 冷却水設備不要、建屋・基礎小、総建設費はディーゼルより小 冷却水設備要、建屋・基礎大、総建設費はガスタービンより大  
排気管 大 ガスタービンより小  
運転費 燃料消費率 ディーゼルの1.5倍から2倍 ガスタービンより小  
潤滑油消費率 ディーゼルより小 ガスタービンより大  
冷却水消費 無し 有り  
電力消費量
(ヒーチング他)
極小  
保守・
管理
点検運転 1か月 1回  無負荷運転  5分 1か月 1回 無負荷運転 10分  
6か月 1回  無負荷運転  30分 1か月 1回 定格負荷運転 30分
1年  1回  定格負荷運転 1時間  
日常点検 点検か所ディーゼルより少ない 点検か所がガスタービンより多い  
オーバーホール周期 運転時間/1000+起動回数/1000=1 シリンダー・ピストン・弁等主要部品の摩耗・汚損があるため、オーバーホールは大がかりとなる。
周期は5年~10年。なお、ディーゼル発電機の場合冷却水による内部腐食があるため、運転頻度と関係なく修理部品が生じる。
 
または、
運転時間/1000=1でオーバーホール
上記点検運転と非常時運転(5Hr/年)では約
100年程度になる。
非常用用途の場合は一般に製品ライフ中の
オーバーホールは必要ない。
(補機小部品の交換のみで信頼性が維持できる。)
故障及びオーバーホール時
の運転周期
軽微な故障は現場作業となるが重故障時及びオーバーホールが生じた場合は工場持ち込みとなる。 ただし、メーカーとも現地用代替機の用意有り。工場での完全な整備作業が可能。また、原動機が小型のため、代替用意。(半日で代替完了) ほとんど現場作業
作業日数 1~10日
オーバーホール 現場で10日間
 
(株)日立製作所 電機システム部資料より


上記の比較から、最近はガスタービン発電設備が、有利な状況にあります。

(2)自家発設備の起動時間

自家発の起動時間は、概ね20秒から30秒で負荷がかけられる状態になります。
受電との瞬時並列まで1分以内、通常であればピークカットの 母連パターンが確定し、負荷がかけられるまで、2分以内で完了します。
過去、ディーゼル発電設備で運転まで10秒、同期投入が数秒という発電設備がありました。
早く立ち上がることは良いことなのですが、あまりにも同期投入までの時間が早いと同期後にエンジンの回転むらが発生すると影響が母連系統全体にでます。 ケースによっては、自家発が逆電力で停電が発生することも考えられます。
この時は、同期投入までの時間を調整して遅くした経験があります。


(3)自家発設備の生みの親

自家発設備は、電機メーカーが設備を構築します。しかし、維持管理としての、メーカーは違ってきます。
①発電機を含む、電気設備は電機メーカー
②エンジン部分を含むメーカー
③エンジンをコントロールするガバナメーカー(ディーゼルの場合、ウッドワード)
発電機に不良が発生するとややこしい状況になります。
発電機は、故障原因が明確になる場合は、この3者の内の原因メーカーに修理をお願いする形になりますが、 特定できない場合、責任の押し付け合いになります。 機械メーカーに来てもらった場合は、電機・ガバナが不明で、電機メーカーに来てもらうと、エンジン・ガバナが不明。 ガバナも同上の状況となります。
現在は、調査をお願いするには費用がかかります。主たる原因が判明している場合は、そのメーカーと修理を調整すれば よいのですがなかなか不自由です。
本来的には新設した電機メーカーが対応すべきとは考えますが、修理費用の間接費は上がります。 率先して作りたいと言っていたメーカーが、産み落とし不詳の息子が出た原因は、こちらの原因ではないと話します。
各電機メーカーにとて発電機は特殊で専門的な知識が必要です。全体を把握している総合技術者はほとんどいないのかもしれません。
また、他社の部分に手を加えて、トラブルが発生した場合の保証問題もあるようです。
故障原因が特定できず、エンジンメーカーが「運転する前に毎回試験運転をしてください」ととんでもないことを提案します。
当然ながら休日や夜中の急な雨の前に 試験運転はできないと説明したこともありました。
発電設備に関しては、費用を抑えるためにはこちらも勉強が必要だと痛感します。



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