4 設計異話
『施設の計画』
施設の計画を行う際、本当にその施設が必要なのか、そうでないかの判断はどこでなされるのでしょう。
個人で車を検討する場合
①まず車が本当に必要か?
②どのような目的の車が必要か?
③予算はいくらか?
④いつまでに必要か?
を考えます。
しかし、公共工事は違います。
往々にして計画検討時点には、造ることが優先されています。特に公共工事の仕事においてその傾向があります。
厳密な意味での計画検討は意味がありません。矛盾ですが、必要だったかの検討はできあがった後の後生に判断がゆだねられます。
①まず国から予算が付きます。
②いつまでに予算を使い切るか。
③国の目的にあったものをつくります。
④できあがって冷静になり本当に必要だったか検討して後悔します。
『基本が大事』
個人の感想としては、施設の基本計画は、土木(建築)⇒ 機械 ⇒ 電気と続きます。
電気設備は電気が無いと動きません。機械も電気がないと動作しないものがほとんどです。
いろんな設備を付ければ付けるほど災害には弱くなります。ポンプで排水するのではなく、
堤防で水が入らないようにする方がリスクが減ります。堤防は、決壊するかもしれませんが、
故障はありません。なぜ、そうできないかを一番最初に考えるべきです。
ひとえに電気設計者が楽をできる設備は、良い設備となります。電気は器用でいろいろこねることができますが
それに頼るのは問題のある設備と思います。
最初に手を抜かれると、後半の設計者が大きな影響を受けます。特に電気はいつも尻ぬぐいをさせられます。
その際は、己の勉強とあきらめていますが。
『もの造り』
施設や設備設計で「もの」を造り過ぎてはいけません。過ぎたるはな及ばざるがごとしです。
造りすぎてもいいのは、設計者の資料だけです。
「もの」を造りすぎるとは、将来の設計者の設計裕度を奪うものです。
例えば、建物や電気室・管廊への過度の占有、将来分を含みすぎた電気設備、変圧器、コントロールセンタ等々。その他は自分で応用してみてください。
『自分で工事いやなもの』
昔、既設の下水幹線に監視用の光ケーブルを敷設する計画が一時期はやりました。しかし、後に施工企業に聞いたところ、その工事は大変難儀で離職した作業員もいたそうです。
新設の下水幹線に計画し、後のメンテができるように検討されていれば問題はありません。
そのときは、設計者として反対したのですが、一人の設計者の意見はなかなか通りませんでした。
このとき感じていたのが、自分がもしも作業者で、「この悪環境下で作業ができますか?」というこです。
当然、企業側もやりたくありません。安全に気遣う配慮も必要です。
後に、下水幹線の補修工事に合わせて光ケーブルの点検で、マンホールから下水幹線内に入ったことがあります。
余談ですが、マンホールの途中には、トグロを巻いたヘビがこちらを睨んでいました。
滔々と流れる下水の中で光ケーブルには大量のゴミが巻き付いていました。ケーブルはひっぱてもびくともせず今にも切れそうになくらいにテンションがかかっているのを呆然と眺めていました。
ケーブル布設の施工時、下水幹線内の水量が多く、下水管内に固定作業ができなかったそうです。
結果は、後に自らにはねかえります。
『技術コンサルタント』
技術コンサルの作る資料は、メーカーが造る「もの」とおなじです。
(1)作らせた資料は大事に使います。
(2)契約に必要なものは必ず作ってもらいます。
(3)お願いの分はきちっと説明しましょう。
(4)作り替えは自分でもその労力を払いましょう。
(5)労力を払わざる場合は、お金を払いましょう。
(6)途中の仕様変更は、揉めます。揉め事は、担当者同士で処理してはいけません。 組織の報連相を必ず守りましょう。
『設計者』
ユーザー側には経験が浅い設計者や要求仕様を説明できない設計者がいます。メーカーにも優秀な設計者がおり、そうでない成長途上の設計者もいます。
ユーザーの無理難題に、ただ、ただ「YES」、「YES」・・では優秀とは言えません。
ユーザーへ設計思想やだめな技術的理由を説明できる能力。別の方法で解決できることを示せば優秀です。
この時代、優秀な設計者は仕事が増え損な役割かもしれません。それでも思想と哲学を持っています。
大切にしましょう。
無理難題の仕様変更をよく知るメーカー設計者の口癖は、『おぼれる子供に小石を抱かせる仕打ち』といっていました。
すいません、苦労をかました。
『営業』
大きな工事では、形ができてくるほど難題が多く発生します。中身は、相手の事情だったり、こちらの事情だったりします。
ビジネスと割り切る部分は当然存在します。
しかし、彼らもまたサラリーマン。宮仕えの厳しさは、推し量るべきです。コンプライアンスもあります。こちらの合理的な説明を十分にする必要もあります。
無理難題の解決は、お金にかかわる話しがほとんどです。お金にかかわる話しは個人持ちにしてはいけません。
必ず報連相を行い組織的な業務とします。早め、早めにメーカーと組織的な対応の協議が必要です。遅れると傷口が大きくなります。
『工事監督員』
監督員は仕事として監督の義務があります。当然です。しかし、人は当然で動くものではなく感情で動かされるものでもあります。
現場のトラブル、設計者が放置すれば話がこじれます。設計者、監督員がともにメーカーとの協議を行い手間をかければ、設計者の苦労も多くなりますが得るものも多くあります。監督員の気分も良くなります。
みんなの気分を良くなれば副産物として、結局いいものが出来ます。
『現地調整員』
現地調整員は大変です。
設計の矛盾が全て出てきます。
設計に間違いがあっても設備を必ず動かさなければならないのでプレッシャーがあります。
このため、現場での改修・調査に休日はなく、夜遅くまでかかります。不具合発生の休日・夜間の呼び出しもあります。
また、設備が複雑になるにしたがって、後の保守点検作業でも彼らの必要性は高まっています。
以下は直接対応した現地調整員の方々です。
(1)朝早く、夜遅いので「子供の寝顔」しか見ていない。
(2)工事で6か月近く休んでいないので、1ヶ月強制的な休暇取得。
(3)急な呼び出しに、今スキー場にいますと回答し、6時間かけて駆けつけた。
(4)夜中のため、CTR基板をもって、大甕からタクシーで3時間かけて駆けつけた。
(5)ゴールデンウィーク中の故障。トラブルが多く対応者がいないため休みの計画を返上し対応。
頭が下がります。できれば会社のマンパワーを上げてください。
彼らのワークライフバランスを改善するには、事前のシステム設計の完成度上げる真剣さと不具合対応時のバックアップ対応ぐらいしか
残念ながら思いつきません。
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