2 回らない汚泥濃縮機
汚泥濃縮機は、汚泥処理系で使用され、調整汚泥の濃度を2%から5%に濃縮する設備です。
ドラム型洗濯機のような機械で、多量の汚泥を処理するため大型で、かつ高速で回転します。
この機械の電気設備を設計したときの話です。
同濃縮機は、回転数制御を行うためVVVF駆動方式としました。
機械メーカーと電機メーカー受注後、仕様打ち合わせを行いました。
当初から濃縮機は停止時に低速で内部の洗浄行う必要があることがわかっていました。
しかし、10~20rpmの逆転・正転が必要であること、濃縮機は慣性モーメントが大きく低速でも高トルクが
必要と、要求水準が非常に高いことが判明しました。
通常のVVVF(V/F方式)は1/10(100~1000rpm)程度を想定しており、また低速時は高トルク
が発生できません。
今回、1/100(10~1000rpm)の精度とトルクが必要です。
この仕様は想定を超えるものでした。
このためVVVFで仕様を満たせるベクトル制御方式を採用することになりました。
次の問題は、ベクトル制御を採用するとモータ側の回転位置検出用のパルスジェネレータが必要となります。
機械メーカー側ではモータ(180kW)は製作しつつ有り、それにパルスジェネレータは取り付けられない
構造ということでした。
機械メーカー側提案で、センサのいらないベクトル制御を用意している電機メーカーがあるとのことで、このことが
もめる原因なりました。
当時、このクラスの大型VVVFは各電機メーカーで同じような仕様を用意しておらず、今回のメーカーにはセンサレスVVVFがありません。このためなかなか話がまとまら
なかったことを思い出します。
最終的には、モータの製作変更を行い、パルスジェネレータを取り付けたと記憶しています。その際、追加の金額が発生
したかどうかは記憶にありません。
ただ、試運転で大型の濃縮機が小刻みにゆっくり回転するさまは、普通のVVVFではできない動きだったことは
記憶しています。直流電動機並みの制御ができるベクトル制御のすごさです。
このとき、VVVFの構造を再学習する必要を感じ、購入した本が数冊いまも本棚に眠っています。
従来の発注は、機械装置、電動機は機械メーカー。制御するVVVFは電動機メーカーとしていたのですが、
大型の電動機や高圧の電動機をVVVFで運転する場合は、電動機とVVVFはセットで発注すべきものとなっています。
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