18 進化しない操作画面
処理場の中央監視用LCD装置は、操作員に日々必要な情報を提供するマン・マシン系において非常に重要な役割を行っています。
プラントで運用する機器の操作、制御の確認、故障表示などを行います。
しかし、表示される基本的な情報は、何十年も進歩や改善が見られないように思います。
確かに、画面のグラフィックはきれいで、漢字や細かい表示が可能です。
トレンドも長期の記録がてきるようになりましたが、コンセプトは古いままのように感じます。
複雑でブラックボックス化するプラント設備に対して多量の情報処理ができるようになった装置に必要なのは、「設備情報の見える化」だと考えています。
1 設備情報の見える化とは?
(1)「準備完了条件」が表示していない。
ポンプや自家発、ブロワなど補機を含む大型機器には「準備完了条件」や「起動条件」が
あります。
しかし、この「準備完了条件」なるものが表示されないと、機器は運転できないのですが
直ぐに対応するには、内容を覚えておくしかありません。
しかし、緊急時など直ぐ思い出せるのはベテランになってからとなります。新人にはなかなか思いつきません。
本来、準備完了条件はベテランになれば確実に覚えておくべきもの。すぐわかるようになればベテランということになるのでしょうが
果たして、その知識が必要かといえば、内容がわかるように表示してあげれば新人でも直ぐわかります。
ベテランから伝承すべきものでもありません。
たとえば、機器(主ポンプ)の準備完了条件の表示例です。
各画面には「準備完了」表示は必ずあります。しかし、
内容まで表示した例はありません。
こちらが担当したA処理場で一部作成したことはあります。
既設の更新工事であったため、完全な準備完了条件を表現できませんでしたが、それも何もないよりは
よいのではと考えています。
できれば、追加で対処方法が表示されればさらに良いでしょう。
なお、対処方法については設計時に全て入力することはできないので、後から追記できるように工夫したシステムを構築することも必要です。
写真や文章の追記が必要となる場合があるので「データベースサーバー」とのリンクがとれればより柔軟性が増します。
(2)始動工程
ポンプ、ブロワなど補機を含めて始動する機器の工程を表示。
どこで起動できないのかが直ぐ判明。
始動工程(ブロワ)の例
(3)各設備の制御の内容
現在、ポンプ及び自家発、ブロワ、水処理などの数多くの制御を行っていますが、各制御の
中身はブラックボックス化しています。
制御はコントローラのプログラム演算によってい行っています。このため、どのタイミングで始動し、停止のか。
目標にしたがって追従しているのか。ひとたび制御をはづれると原因を特定したり、制御がどのように安定するのか見えません。
制御の中身の動作をわかりやすくする工夫が必要と思います。
ブロワ制御の内容をモデリング 例
(内容がいまいちわかりづらいので改善が必要)
受電の負荷制限制御のモデリング 例
2 警報音の識別
故障が発生すると、各処理場では、警報音が中央操作室に響き渡ります。
概ね、軽故障、重故障で音色を変えたりしています。
ポンプ場毎に変えたりでこれが、なかなかわかりづらい。
昔、いくつものポンプ場で故障の警報音の音色がわかりづらいので、音色の入っているICチップに
女性の声で「○○ポンプ場故障です」と入力してもらったことがあり、重宝した記憶があります。
重故障だから、けたたましい音にしないといけない、と何となく日本人は音にたいする感覚があるようです。
人の心の反応にはフェーズ0~4まであり、
フェーズ0 眠っている状態
フェーズ1 意識がぼけた状態
フェーズ2 リラックスした状態
フェーズ3 危険作業中、仕事の意欲が高い状態
フェーズ4 パニック状態
以上の区分がされています。
フェーズ3が緊張感を持って一番作業ができる心の状態だそうです。
警報音でびっくりするといきなりフェーズ4にはいってしまうことがないのかと、我が身も思い返しています。
テレビドラマでアメリカなどの火災など非常時の警報音が軟らかいのに感心したりしました。
故障メッセージは、軟らかくメッセージを読み上げてもらいたい気もします。頻繁にでると、だんだん、誰かと同じでうるさく感じるかもしれません。
将来、
何の条件が足りなくて準備完了が表示していない、また、どのような措置が必要かなど。ペッパー君がメッセージを語る時代が来るかもしれません。
さらに進んで、「○○が最善なので対処を行いました。」のメッセージまでほしい。
監視員が入らなくなるかもしれませんが・・・
3 改善の方向性
「設備情報の見える化」で、例に挙げたものは、まだまだわかりやすさでこなれていない部分があり改善する余地があります。
「準備完了が表示されない故障の発生頻度が低いので必要ない」との意見もあるように思います。
しかし、逆に頻度が低いと日頃の関心が薄く故障発生時の確認調査(マニュアルをさがすのに?)に時間がかかります。
自家発や雨水ポンプなど豪雨の状況下で運転しなければいけない機器は、なおさら必要と考えます。
設備情報の見える化は、プラントの特性により工夫する余地はまだまだたくさんあるような気がします。
現在ではAIとか、DXとか高度な情報技術が下水にも入り込んでくる余地も十分ありそうですが、そのような高度なものではなく、
地道ですが、本来、監視員(特に慣れていない)がほしかった情報を「マニュアルなし」
で提供するシステムを構築するという発想が操作画面にと考えます。
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