水処理プラントの管理


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 設計・施工 (3 電気設備)

17 消えた制御・消えそうな制御



1 揚水設備の制御

(1) 予測制御

ポンプ場、処理場に流入してくる下水(雨水)を効率よく排水することにより 浸水を最小限にとどめるための制御を目指しています。
予測制御という言葉に何かあこがれを感じます。人は未来を予測したい。
予測すれば被害を防げる災害もあります。その観点からのネーミングになります。





ただし、いくら情報を入れ込んでも、制御で動かす設備が変わらなければ結果はついて来ないことになります。

①幹線が他のポンプ場、雨水滞水池、貯留幹線とも共有していて相互運用のメリットが発揮できる。
②ポンプが先行待機型である。ポンプの潤滑水が事前に全台に通水されており、ポンプの順治起動に無駄時間がない。 自家発が負荷が増える前に先行起動しており、ポンプの起動に合わせて直ぐ給電できる。
③長時間の雨水排水の変化に併せて自家発運転や台数を調整し燃料使用量の最適化ができる。(随時の燃料確保が難しい場合を想定)

等のハード部分の改善がなければ基本的には他の制御で間に合うことになります。
規模が大きくなると構築を急ぐと費用が大きくなりすぎ、メリットが合わない可能性があります。
逆に構築に時間がかかると、当初に完成した設備の更新が必要な場合もあります。 また、設備が複雑になると、ウイークポイントも増加することになります。
この評価は、現時点の感想です。今後の時代の進歩で情報獲得の運用費が安くなる場合やAIの進歩で 評価が変わり活用が容易にできるようなるかもしれません。


2 水処理設備の制御




(1)初沈汚泥引抜制御

①連続固形物制御
設定された開始時刻から終了時刻までに固形物プリセット値(1日の固形物量)を達成するようにポンプの連続制御を行う。
②汚泥界面制御
初沈汚泥ピット内のレベルが一定以下になるように各池の初沈汚泥引抜量を制御する。


(2)反応タンク制御

①ORP制御
反応タンクのORP(酸化還電位差)が一定の範囲になるように風量を制御する。
②流入比率一定制御
反応タンク流入量に空気倍率を乗じた値を目標総風量とし、各池に比例配分して風量の制御を行う。


(3)返送汚泥制御・余剰汚泥制御

①MLSS制御
流入量、返送汚泥量及び返送汚泥濃度により、反応タンクのMLSS濃度を算出し、これとMLSS設定値、反応タンク内余剰汚泥固形物量を算出制御することにより 反応タンク内の総汚泥量を調整しようとするもの
②総汚泥量一定制御
反応タンク、終沈内の固形物収支により算出した総汚泥量(TS)が一定になるように連続的にポンプの速度制御を行う。
③連続固形物制御
設定された開始時刻から終了時刻までに固形物プリセット値(1日の固形物引抜量)を達成するように連続的にポンプの速度制御を行う。
④汚泥界面制御
終沈の汚泥引き抜きピットの界面を測定し各池の引き抜き量の制御を行う。


(4)滅菌制御

①COD比例制御
次亜塩の注入量を塩素混和池に流入する二次処理水にあるCOD比率に併せて制御を行う。


(5)急速ろ過機制御

①差圧一定制御
急速ろ過機の流入量を差圧に合わせて制御を行う。洗浄工程も差圧で行う。


(6)汚泥調整槽制御

①汚泥界面一定制御
汚泥界面計により、汚泥の界面レベルが一定になるように調整汚泥の引き抜き制御を行います。
②汚泥固形物一定制御
設定された開始時刻から終了時刻までに固形物プリセット値(1日の固形物引抜量)を達成するように連続的にポンプの速度制御を行う。


3 反応タンク、返送汚泥及び余剰汚泥制御の問題点

(1)プロセス全体に貯留されている汚泥量の有限性
系内に貯留される汚泥量の管理は、余剰汚泥の引き抜きによって行われますが、汚泥量の増加は、短期間では困難です。 たとえば負荷量が増加し、それに伴い、活性汚泥量の増加が必要なときでも、系内の活性汚泥量の増加は不可能です。 また、系内に貯留されている活性汚泥量の配分を変化させることも考えられますが、一般的には、返送汚泥ピットは 比較的小さく、活性汚泥量の貯留に限りがあります。返送汚泥流量を増加させても濃度が低下し、返送汚泥量(固形物量) したがって、系内に貯留している活性汚泥量の配分を変化させることは困難です。

(2)流速の変動による汚泥貯留配分
活性汚泥量は、反応タンクと終沈に貯留されていますが、その配分は、反応タンクの流速(流入水量)によって変化します。 返送汚泥流量を変化させることにより、配分比を変えることも考えられますが、前述のように、一般的に、返送汚泥ピットの 容量は小さいため、それほど、配分比率は変化しません。

(3)無駄時間が長い。
BOD負荷、SRT、汚泥指標等のいずれもかなり長い無駄時間があります。たとえば、BOD負荷-SS負荷負荷において、多量の余剰汚泥 引き抜きを行うと、BOD-SS負荷は、大きくなる方法ですが、すぐには、変化せず、制御を困難にしています。 ORP計、アンモニア計、UV計などを制御に組み込むと長時間の制御系を構築しなければならないが、フィードバック制御では 制御しきれず、フィードフォワード制御の考えを入れる必要がりますが、流入する下水は一様な物質ではないため、 制御構築は困難です。

(4)情報量(プロセス量)の不確かさ
制御系として、かなり長い無駄時間が存在することは前述の通りですが、それ以外に、情報量(プロセス量)の不確かさが存在します。 たとえば、同量の活性汚泥量でも、反応タンク槽内の流速により系内活性汚泥量の配分が変化します。このことにより、見かけ上 MLSS濃度が変化するという現象が発生します。それ故、かなり長い時間の平均化が必要となります。


4 水処理制御全体の問題点

(1)水質計器の信頼性
プロセス計器として、水質の測定にBOD計は存在しません。近年、BOD計、COD計の代替センサーとしてUV計の採用がなされていますが、 UV-BODの相関関係は常に高いとは限りません。またSVI計もかなり多くの保守頻度を要します。 さらに、MLSS計、ORP計、アンモニア計についても汚損の問題がしばしば発生しています。
各プロセス量を計測する水質計器の信頼性が低いという評価がなされており、自動制御実現のための障害の一つです。
また、汚泥界面を計測する界面計の信頼性を維持するために、高頻度のメンテナンスが必要です。 汚泥濃度計はM社製の相関が高い製品であり多様されるようになりましたが、やはり汚損によるメンテナンス頻度が高いなどの問題はあります。
反応タンクの制御として、DO計による制御が一応確立されていますが、水質計器のメンテナンスの呪縛から逃れることは ありません。最近の蛍光式のDO計については、メンテナンス性の改善が見られるようになりましたが、まだまだ メンテナンス間隔は満足ができレベルではありません。


5 感想

制御が何故、消えていったのか、消えそうなのかを考えるとき、目的と効果が必ずしも明確でない点にあるかもしれません。
複雑な制御は学問的にはおもしろい(若い時はかなり興味がありました)かもしれませんが、「雨水排水の信頼性向上、水質の著しい改善、省エネ・省力化への貢献」が他の代替え制御に 比較して大きな効果が得られるのかが曖昧であったのが原因では、と推察します。
著しい効果が見込まれる場合は、困難であっても達成していたのではと考えます。 個人的には、最後に行き着いた「Simple is best」の基本を忘れないようにしたいと思います。

注:一部の表記は、「三菱計装ハンドブック 技術資料編」からの引用によります。


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