水処理プラントの管理


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 設計・施工 (4 既存設備の浸水対策)

2 主ポンプのシーケンスの検討



目次
1 はじめに
2 検討に当たっての基本思想
3 制御方式の選定
4 緩急弁の採用について
5 制御電源について
6 まとめ

参考例
シーケンス例とモデルシーケンス


1 はじめに

主ポンプ運転のSQC(CTR)の役割と制御電源の方法に付いてのあり方に関して検討を行います。 その中で、制御方式、制御電源の確保について主ポンプの制御方式は各メーカー毎・機場毎に異なったり 制御電源の取り方やシーケンスの組み方をしており、このため異常時における動作がまちまちであったりして、 メンテナンスを難しくしていることがあります。


2 検討に当たっての基本思想

(1)SQC(CTR)がダウンした場合、主ポンプは停止させない。またその保護は、機側レベルと同等とします。

(2)主ポンプの運転を最優先に考え、さらに運転中はいかなるトラブルの場合も潤滑水弁を開のままとし、常に 潤滑水を通水しておくようにします。

(3)主ポンプ運転中は、制御電源のトラブルの場合でも、最低レベルの保護を確保するできるようにします。 この保護の内容は、機側レベルと同等とし(51、67、69)保護が確保できない場合は、主ポンプを停止させます。

なお、上記の基本思想に合致しない制御回路の実例シーケンスとモデルシーケンスを別途記載としたので参考にしてください。


3 制御方式等の選定

2項の基本思想をベースに、主ポンプの制御方式、制御方式、制御電源の取り方及び補機類の種別を選定してゆくと次の ようになります。

(1)開閉器
①種類
ポンプの開閉装置として過去、容量の大きなものは遮断器が採用されていましたが、 現在、容量の大きな高圧コンビネーションスタータ(VCS)が存在するので遮断器(VCB)は採用する必要はありません。 操作機構は操作電流が少ないバネ蓄勢式を採用しています。

②励磁方式
常励式とラッチ式がります。
当初、「ポンプの運転を優先する思想からラッチ式がよい。この場合、励磁電源が喪失したときのトリップできるようにバネ蓄勢式等 を必ず付加すること」となっていましたが、瞬時停電があった場合に直入れ状態になり危険であること、また、無電圧(27)で トリップさせればラッチ式は常励式と同様になってしまうことから常励式を推奨します。

③制御電源 後述

④その他
操作回路のチャタリング防止として、投入回路にインターロックを設けます。

(2)潤滑水弁
①種類
(ア)電磁弁は、常励式であるために励磁電源のトラブル等によってポンプ運転時に閉まることがあるので信頼性が低くなります。
(イ)電動弁は、上記のようなことがなくポンプの保護上安全です。また回路上、開信号と開信号を1つのリレー接点(a、b)で行わず 別々のリレー接点を使用するなどの工夫が必要です。(ラッチ式の場合はこの限りではない)
(ウ)開条件
ハードウエアで「開」リレーをラッチ式とし、52の「入」条件をORでセット側に組む(モデルシーケンス参照)

(3)ハードウエア保護回路
機側レベルでの重故障としては、過電流(51)、地絡(67)、潤滑水断(69)があり、すなわちこれがハードウエアの保護条件 となり常用モードにおいても検出可能とします。また、PF断は軽故障とし、潤滑水断の検出回路に余分な条件を組み入れないようにします。 SQC(CTR)ダウン時に、セルビウス及びVVVF運転継続の場合、同故障に対してハードウエアの保護回路が必要となります。
(セルビウス、VVVFのシーケンスが、1部ソフト化されている場合)


4 緩急弁の採用について

(採用理由)
当初、停電時、冷却水が流出し、高架水槽が空になり復電後、即時にポンプが起動できなくなるのを防ぐため電動弁が断じに機械的に閉となる 緩急弁を採用していました。
(問題点)
停電時とは、全停電を想定したものであり、たとえば電動弁の電源だけで断となるような部分的停電に対したものではありません。 採用の意図としても復電時の初期状態における潤滑水を確保する目的ですが、このためにいろいろな問題が生じています。

(1)全停電の想定
潤滑水弁が「開」のままであっても、高架水槽の容量から、揚水ポンプが停止していても数時間は潤滑水を確保でき、また有人機場 で対応も早く、がつ揚水ポンプが浸水の恐れがない場所に設置されていて復電後直ぐ揚水ポンプが運転可能な体制にある場合、あえ て緩急弁を採用することはないと考えます。
しかし、潤滑水が圧力タンクから供給され、潤滑水弁が開のままであると、圧力タンクが空になり、復電後初期状態から、圧力の立ち 上げに手動介入しなければならないような手間がかかる事情の場合は検討の余地があります。

(2)部分停電の想定
高圧母線が充電されているが、電動弁の電源が断となった場合、緩急弁が閉まってしまい。ポンプを止めざるを得なくなります。 これは、ポンプの運転を優先する思想に反することになるし、電動弁の断水検出用リレーの電源が同一であると、実際断水である のに、シーケンス上その検出が行われず重大事故に繋がることになります。
従って、基本的には緩急弁は採用すべきではありません。しかし、次の条件の場合には採用について検討する余地はあります。

①高架水槽の容量が小さく、無人の機場である場合

②全停電の検出で弁を閉めるシーケンスが組める場合

③機側レベルの保護回路と同一の電源である場合

④揚水ポンプの信頼性が低く、物理的に浸水対策が行えない場合
(基本的に、信頼性を高めることが前提であります)

⑤圧力タンクを使用し、初期立ち上げに手間がかかるような特殊な事情がある場合
(自動的に立ち上がるように改造すべきです)


5 制御電源

制御電源については、その種類と負荷との整合性の問題や配電方法による問題が見受けられるが、以下にそれらについて報告します。


(1)電源の種類
開閉器、潤滑水弁、保護回路等の制御電源の種類が別々にあると、異常時の動作パターンが多くメンテナンスが難しくなり、ポンプ運転 の基本思想に添うようにすると、複雑なシーケンスを組むことになります。 また、増設や改造によって回路が煩雑になっている場合もあり、できれば少ない方が望ましい。 以下に制御電源の動作について1例を示します。

表1 制御電源の種類と電源断時の動作

 電源の種類  負 荷  主ポンプの運転
(各電源断時の主ポンプ等
の状態)
潤滑水弁(電動弁) 潤滑水断の検出
AC100V(PT2次) VCS投入 運転継続 開のまま
DC100V(DC電源) VCSトリップ 運転継続だがトリップ不能 開のまま 不能
AC100V(低圧動力) 封水弁 運転継続 開のまま
AC100V(UPS) 制御回路 断水で停止 開のまま 断水検出と同一の状態

注意:VCSはラッチ式

(2)電源の種別
制御電源の種類が少ない方が望ましいが、その種別、たとえばACとかDCとかはどれがよいか以下の4種類について検討します。
① 開閉器、潤滑水弁、保護回路の制御電源にDCを使用
② 同様にPTの2次電源を使用
③ 同様にUPS電源の使用
④ 低動トランスを使用

①のDC電源を使用した場合
長所
電源の信頼性が高い
買電の瞬時停電対策たとれる
短所
現場(フローリレー)にDCを使用した場合に地絡の方向検出が、とりにくい。

②の2次電源を使用の場合
長所
電源が完全に分離されているため、メンテナンスが容易です。
変圧器、絶縁が容易です。
短所
遮断器(現在はVCS)の場合は投入電源にDCを使用する必要があります。
瞬時停電対策がとれません。
発電母線負荷の場合、表示用に別電源が必要となります。
PTヒューズの信頼性の問題

③UPS電源を使用した場合
長所
電源の信頼性が高い
買電の瞬時停電対策がとれる。
変圧器、絶縁が容易である。
短所
遮断器(現在はVCS)の場合、投入電源にDCを使用する必要があります。
インバータの負荷が増えます。
ミニチュアリレーでコイルの電流は10mA程度(AC100Vの場合)であり、パワーリレーでも 50mA程度であって負荷として大きくありません。従って、遮断器(現在はVCS)投入電源としてはUPS電源で統一すること に対して検討することは、将来的に有用です。なお、制御電源の使い分けに付いては次の表に示します。

④低圧トランスの電源を使用した場合
長所
変圧器、絶縁が容易です。
短所
瞬停対策がとれません。

(3)制御電源の追懐分け(1例)

  電源種別 負荷容量
遮断器 DC 投入電流50A(100V)ただしバネ操作は3~4Aと低いからUPSでも可能
VCS UPS 投入電流2~3A
封水弁 UPS 20VA(波形ひずみ対策)
制御回路   通常、主ポンプ1台あたりのリレー数はパワーリレー5個ミニチュアリレー50個でありUPSの容量アップが必要

制御電源と負荷についての1例を示したが既設を改造する場合にはいろいろ問題があり (電源が種類を変えるには膨大な費用を必要とし、事実上不可能な場合があります。従って 各機場毎に最も適正な方法を検討する必要があります。

(4)配電方式
配電方式については共通方式(渡り配線)と個別方式があるが特に共通方式の場合に次の 問題点があります。(共通方式と個別方式の概略図は次に記載)

①遮断器
電源トラブル時、すべての機器のON・OFFが不能となる場合があります。

②重故障
(ア)すべての故障検出が不能になります。
(イ)運転中の機器が故障したとき、トリップが不能になります。
(故障検出がb接点の場合)

③軽故障
  すべての機器の故障検出が不能

④表示
すべての機器の表示が不能

⑤制御回路(ハードのシーケンス回路)
すべての機器の制御不能とします。


6 まとめ

以上のように、制御方式等について検討してみると制御回路については細部についての配慮に欠ける面が見受けられます。
各機場毎に対策が必要です。 制御電源の統一が望ましいが、処理場・ポンプ場すべて画一的に考えるのではなく基本思想を踏まえた上で、汚水用か雨水 用か、瞬時停電対策が必要かなど各パラメータからその種別を考慮すべきであろうし、潤滑水弁に関しても同様に、各機場に 即した検討が必要です。
また、配電方式については、機場によっては、共通方式、個別方式あるいは両方を採用しています。ここで問題なのは、 共通方式(渡り線)の場合、電源トラブル時に全機が運転不能になる恐れがある。これについては個別方式の採用について、 機場の特性に応じた検討が必要になります。
対策が必要な機場については、既設設備を単に否定するのではなく、有効に利用した改良方法を考えてゆくべきです。 今後、トラブルを想定した見直しのなかでさらにSQC(CTR)復帰後、電源復帰後のソフト、ハードシーケンスの マッチング等についても再確認する必要があります。また、電力系統の制御電源についても基本思想は同様に考えます。

参考


各処理場・ポンプ場の制御回路を調査したところ基本思想が満足されない機場が見受けられたので ここに実例シーケンスとモデルシーケンスを記載したので参考にしていただきたい。



シーケンス№1




シーケンス№2




シーケンス№3




シーケンス№4




シーケンス№5




シーケンス№6




シーケンス№7




モデルシーケンス(共通)




モデルシーケンス(VCS・VCB)


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