水処理プラントの管理


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 故障・保守 (1 故障)

5 特別高圧停電


1 状況

平成○年○月○日 日曜日、当直(二名)の12時42分。
特別高圧受電(66kV)に停電が発生し、 処理場の全機能が停止。

昼食後の空き時間で、中央操作室のとなりの主電気室で床の汚れを取るため掃除機をかけて いました。
停電が無停電電源装置(UPS)の扉に、掃除機があった瞬間のタイミングであったので 非常に驚いた記憶があります。
掃除機がUPSの扉に当たったくらいで停電はあり得ないのですが、 タイミングがよかったです。
操作室に戻り、LCD装置で受電状態を確認すると特別高圧受電の遮断器から 場内高圧線連絡まで全てが繋がった状態で停電していました。
処理場の受電は常用線と予備線の2回線受電としていますが、 そのときは、予備線が東電側の要請により、受電が停止ししていました。




停電後、の故障表示


画面のアラームは、数え切れないほど出ています


が、受電設備の過電流等の故障は発生していなかったと思います。
この時点で、かなりパニクっています。
通常、停電が発生すると、自家発設備が自動起動し、場内電力が確保されるはずですが、 このときは、起動しません。

マーフィーの法則 故障する可能性のあるものは必ず故障する。

自家発設備を手動で運転するための準備操作を行いました。
特高受電遮断器から内部母線連絡遮断器まで全てが繋がった 状態で停電していたため、必要な箇所の遮断器の切り離しを行いました。
まず、特高遮断器「52R20」を OFF(東電側影響を考慮)
続いて、母線連絡受電遮断器「E52L1」 OFF



これにより、内部電源を確保できる給電ルートを確認。
自家発は3台あり、晴天時のため1台(4000kW)で十分な電力のはづでした。
1台目のG10自家発を「手動」起動。
なんと、起動するが運転せず停止。準備完了が付いたため再度起動したが運転せず停止。


あせり・・・・


2台目のG20自家発を起動から運転。

ほっと・・!


幸い運転できたため、自家発の給電遮断器「52G」「52GL」を投入し、
自家発側からの給電に成功。
長い時間のように感じましたが、10分もたっていなかったように 記憶しています。

電源回復により、ポンプ、ブロワの主機が運転でき落ち着いたので 東電専用電話により、確認したところ東電側で、調査中とのことでした。
最終的に、受電ができたのはそれから40分ぐらい経過した後と記憶しています。
復電してから、東電に再確認したところでは、他の需要家の事故が原因とのことでした。詳細不明。

なお、その後、要員を確保し、場内を点検しましたが幸いプラントには異常がありませんでした。

ところで、停電制御が正常であればどのように行われるかと言えば、
停電発生した10秒後、自家発が起動します。
約30秒後には、場内負荷に自家発設備から給電されるはずです。


通常操作は何も必要ありません。



通常、常用線が停電した場合、予備線が正常であれば自家発起動の前に5秒程度で切り替わります。


2 故障の後日談

(1)停電の原因
ある有名な需要家(計算機能力世界一にもなった)の特別高圧受電設備の点検時、点検メーカーが誤って充電側の地絡装置 を操作したためだそうです。
後日、需要家の担当者が説明とお詫びに来られました。
処理場の機器等に影響がなかったため、 お詫びで済みましたが、実害が発生した場合にはどうなるか。同じ設備担当者として 感慨深いものがありました。

(2)停電時に、切れるはずの「E52L1」の遮断器の調査
停電制御は、不足電圧継電器(27)で直ぐ動作させず、コントローラの プログラムで制御しています。調査した限りではプログラムに問題はなく、簡易の 試験でも正常に動作確認できました。ただ、プラント運用上当時と同じ試験が できず、調査が不十分だったかもしれません。
リレー関係の接触不良の可能性もあり、特定までに至りませんでした。
この手の調査は非常に難しいものです。

(3)自家発G10が起動しなかった件は?
G10が完全停電時に起動から運転に入る時間までは、保護が形成されないようにタイマが設定されています。 今回、設定時間が短すぎて補機関係の保護が動作することにより、停止してしまうことが判明。
補機動力が確保するまで30秒以上必要なところ25秒設定なっていました。完全停電でなければ、補機電源 が確保されているため起動には問題が無かった。

(4)自家発G20が運転できた理由
G10とG20は幸い型式の違いがあり、起動時に保護が必要な補機がなく通常起動が 可能であった。



3 反省点

(1)故障が場内か場外か確実に把握していたか?
今回は、遮断器が全て、投入された状態のためそのように考えましたが ゆっくり考える余裕があったか?
当時、晴天時であったため流入下水量は多くなく、沈砂池には、1時間以上の 余裕がありました。また、水処理も20~30分程度の余裕があったと思われます。
通常運用で、UPSも給電時間が1時間程度は確保されています。
まず、東電側に直通電話で確認しても良かったと思われます。ただ、東電側に余裕があったかは不明ですが・・。
故障内容の精査を行う時間があったのでもう少し焦らず対応すべきです。 焦るとさらに故障を拡大する場合もあります。

(2)面倒ですが、再現試験を実施すべきか?
理想的には、原因を徹底的にしらべるために同じ状況をつくり再現が 発生するまで試験を行うべきですが、原因が接触不良であったりすると 再現できない場合もあります。
また、複雑な設備はやっかいなものです。
プログラムの確認ができれば、次の原因の接触不良と考え 消去法により、リレー類の交換を実施する等、放置はしないことが重要でしょうか。



4 検討事項

停電制御の考え方に問題はないのでしょうか。 停電制御の基本的な考え方は?

(1)常用線が停電した場合
予備線が正常であれば、まず予備線に切り替えるため母線連絡受電遮断器「E52L1」 がその時間5秒間、ロックされます。

(2)常用線、予備線とも停電した場合
10秒後に「E52L1」がOFFになり、自家発が自動起動します。 論理的に考えるとこの制御で合っているように見えます。

(3)実際はどうでしょう。以下の方が実用的では?
常用線から予備線に切り替えるときに全停電が発生しています。 「E52L1」は、停電しているのでロックをかけるのではなく 不足電圧継電器の整定時間(2~3秒)で直ぐトリップさせる。 直ぐ自家発を運転する。

常用線から予備線に切替えを行いますが、同時に自家発も関係なく運転します。
場内負荷は、一旦、自家発負荷となるため給電が20秒程度遅れますが、受電側で 再度停電が発生する場合も有りこの方が合理的です。
制御上もプログラムでロックを行わなくて良いことになり、シンプルになります。 これは、予期せぬプログラムミスが減らせることにもなります。
場内負荷は自家発負荷となったのち、予備線へ復電制御で戻す方法がよいと考えます。





5 教訓

当日の天気が晴天であったことが、まだ幸運でした。降雨時など天気が悪いときもあります。
なるべくそのときには当たりたくないですが、故障が発生しにくい設備とすることは当然ですが、 故障時も応用が利くような日頃のシュミレーション訓練が常に必要だと思います。
また、そのことによって設備の問題点が発見できるため設備の改善も促進されます。
「必要は発明の母」







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