水処理プラントの管理


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 故障・保守 (1 故障)

2 完成図書の役割


ある設備に故障が発生すると現場の状況を確認します。

機械設備では機械の異音、配管の漏水、水中ポンプの揚水不可、掻き寄せ機のシャーピン破断、エアーシリンダーのエアー漏れ、電動弁の固着等々、目で見える故障が発生します。
状況を見ると何が壊れているのかが、概ね把握できます。
ただ、機器を分解して修理を行おうとすると、出たとこ勝負ではなくどのような構造をしているかなど、ベテランになるまでは構造を把握する必要があります。
また、不明な点があればメーカーへの技術的な問い合わせが必要な場合もあります。
この際に、完成図書を利用します。
まあ、ベテランでも基本に帰り、どこに対象機器の図書があるかは把握する必要があるので、図書を全く見ない点があるとすれば改善すべき習慣でしょう。

電気設備が絡む故障調査の際、機械設備を同じように現場の確認を行うのですが、電気故障の場合、確認してわかる事例(地絡やサーマル動作など)は良いのですが シーケンス回路や計装回路等が絡む場合、完成図書(関連図書含む)を見ないとさっぱりわかりません。



電気設備の場合もベテランになってくると簡単な故障では完成図書を見ないで済まそうとします。
しかし、簡単でもやはり完成図書で確認し、その図面が何年のどの工事の図書に入っているなどの知識ベースの基礎を整えるべきなんでしょう。


調査が必要な故障で、まず突き当たるのが関連図書の「場所」です。

(1)対象設備の銘板
対象設備の完成図書を探す場合、
機器や各盤に取り付けられている銘板から探すのも一案です。
銘板がある場合は、製造年月日、製造メーカ、工事名(あれば)等を確認して早めに完成図書に行き着けます。

(2)完成図書保管場所
銘板では確認できないような場合は、関連図書はどこにあるのでしょう。

新人の場合当然ですが、新しく異動した職員でも同じような状態です。
まず、身近な職員に完成図書の保管場所を確認します。何カ所かに分けて保管している場合はルールを教えてもらいます。

設備は、いろいろな時期に増設や修理、改良が繰り返されています。
工事台帳(デジタル含む)が整備されていても、どの時期の工事の完成図書が最新版かを探し出すのが大変です。 (電気設備工事の名称が現場の設備と合致していないことが往々にしてあるため)

歴史が長い処理場になればなるほど探し出すのがさらに大変になります。
また、図書がきれいに整理されている処理場はいいのですが、そうでないところも存在します。

残念ながら探し出せる早さがその処理場のベテラン職員?になります。
新人にもわかりやすい整理と保管の工夫がさらに必要と思います。
探すのに苦労して、完成図書室に入りびたりになっているとやがて図書がどこに保管されているかわかるようになります。(ベテラン職員に進化)

(3)完成図書の構成
完成図書が見つかると、次に必要とする資料(シーケンス、計装等)がどこに入っているかになります。 図書の構成ですがだいたい以下のように構成されています。
処理場や施設の施工種別(建築電気等)により、図書の構成が多少前後したり、追加されたり等の違いが生じるかもしれませんが、 概ね必要な内容の項目自体は変わらないように思います。




機械設備に特に異常が見られず故障復帰ができなかったり、機械が指示どおり動作しない故障の場合、電気設備の故障が考えられます。
完成図書で動きを理解するために「機能仕様書」(設備がどのように制御されているかを解説している)を確認してます。
(なお、「機能仕様書」は機械設備から提供されるものもあります。)
これにより機械設備の正常時の動きをまず確認します。
次に、「機能仕様書」を元に作成された実際のハードシーケンス(電気回路や計装回路)を調べ原因を推測します。

写真

(4)ソフトシーケンス
ただ、電気設備の故障調査には次の山があります。
SQC、MCTR等のソフトシーケンスです。
いわゆるソフトウエアで作成されたシーケンスです。
こちらは、完成図書に簡単なPLCのソフトシーケンスは掲載されています。
しかし、プラント管理用のソフトウエアは複雑すぎるため、全てのプログラムドキュメントを提出してい るメーカーはなくなりました。
 ただし、紙ベースのドキュメントがあったとしてもハードシーケンスと違って目視でリレー動作状態を確認できるわけではありません。

シーケンサ内のブログラムを確認するには、メーカが提供する専用ソフトをインストールした パソコン端末を利用しなければなりません。
しかし、操作する手順や表示した内容にはメーカー毎の違いがあります。
同一メーカーでも時代により変わります。ついて行くのは大変です。
残念ながら、それでもついて行かないと調査ができない領域が大幅に増えています。

これを多少なりとも改善するため、メーカーにお願いして操作研修を何度か実施しています。
職員にレベル差はありますが、理解度を上げるには他に手はない状況です。

遠くない時代には、AIが不良箇所を自ら解析してくれるようになると思いますが、それまでは 地道な研鑚が必要です。


(5)完成著書のデータベース
最近の図書は、デジタルデータとして納品されるようになっています。
ただ、せっかくデジタルデータが入ってくるのに十分に生かしているとは言えません。
個人的には、
処理場の主なシーケンス(計装含む)等のデータをほぼ全てスマホで確認できるようにしています。
(ひとによると思いますがipadまで大きくなると面倒)
かなりのデータ量(約60G)になります。ただ、なれてくると現場に急行したときも時間をかけずに探し出せるようになります。 (2 保守工具)
個人的な趣味の域をはみ出して
ipadで作業現場から処理場内wifiにアクセスして完成図書データを検索できるように構築するのもアリなのかもしれません。
ただ、データがうまく活用できるように構成したり、更新されないと苦労が報われないことになります。
(過去の設備台帳を含め、挫折したシステムは数知れず)

(6)完成して間もない設備
当然ですが、
設備が完成して間もない時期や、納品されて間もない機械については、保証上の瑕疵が考えられます。
調査は行いますが、直ぐに自分たちで部品を分解したり、取り外したりしないで施工企業に調査・確認を依頼します。

このときの問合せ先が完成図書の「緊急連絡先」となります。


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