水処理プラントの管理


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  設備 (送風機設備)

9 送風機設備


送風機は、反応タンクの活性汚泥が下水を処理をできるように空気を送り込む重要な設備です。

送風機設備の処理場全体の消費電力の約3割を消費しています。このため効率的な運用を行うことが必須な設備となっています。


(1)送風機の形式
処理場で使用される送風機の形式には多段方式と単段方式があります。
①多段方式
十枚前後のインペラが送風機に内蔵されており、各段で圧力を上げて空気を送気します。
②単段方式
内蔵されているインペラは一枚ですが、超高速回転させることにより、多段方式と同等の送気を発生させます。

単段方式の特徴
設置当初は、単段方式の方が風損が少ない分、効率は有利です。
このため、一時期、単段方式の送風機が増設されたことがあります。しかし、単段方式は、インペラが一枚であり、 インペラが汚損すると急速に効率が低下し、多段方式と差が出なくなります。

また、多段方式に比較して風量制御範囲が狭いことにより、台数制御を行う際に注意が必要です。
多段方式に比較して絞り運転ができません。また、圧力上昇に弱いため起動時や絞り運転時に送風機を 保護するサージング防止弁が必要です。

なお、放風を送風機の外気取り込み口にもどすと放風された高温の空気が、送風機に吸い込まれて送風機の本体の温度 が急上昇し、インペラを損傷することがあります。
このようなことがあり、現在、単段方式の送風機の採用はほとんどされていません。



(2)風量制御
送風機の風量制御は、固定速では吸い込み風量を制御することによるものと、VVVF制御によるものがあります。
①吸い込み弁制御
配管に取り付けた蝶型弁により吸い込み弁制御を行います。 古い時代の多段方式の送風機はほとんどこの方式です。
②インレットベーン制御
送風機本体の入り口に組み込んだインレットベーンで行う制御です。
吸い込み弁制御よりも効率が上がります。


③VVVF制御
小型の送風機では、VVVF制御対象機がかなり出ていますが、大型の高圧電動機を使用する送風機ではまだVVVF機がほとんど採用されていません。
送風機は設置後、長期に更新を行うことなく補修しながら使い続ける設備です。また、既設では電気室に高圧VVVFの設置スペース が確保できない等、費用対効果が改善できない部分があります。今後は、省エネやCO2対策からも徐々にVVVF化が進むものと思われます。

(3)台数制御と容量設定
送風機の運転はできる限り最大定格値に近いところで運転すると省エネ効果が大きくなります。 小容量・大容量の送風機がある場合は必要風量に対して、最適な組み合わせを行うことが 必要です。

1:2の組合せ
送風機の組み合わせは、通常、小容量機の1に対して大容量機を2倍とした組み合わせを行っています。
たとえば、小容量機の風量を300m3/分とすると大容量機は600m3/分となります。
運転範囲が重なる様にできれば、この組み合わせでも問題ないように感じます。しかし、送風機の経年劣化 とともに、運転範囲が狭まってくると、運転号機の切り替え時に問題が生じます。


重なり部分が少なくなってくると、小容量機→大容量機→小容量機→大容量機・・・のように送風機の運転号機が の切り替えが頻繁に行うようになります。


一番の改善策は、中型機を設置することですが、予備機を含めると設備投資がかなりかかりそうです。
小容量機の容量不足を想定して1.2:2.0と余裕を持たせることが次善の策となります。
ただし、小容量機の容量を大きくした場合、最低風量が上がります。 大容量機を小さくした場合は全体の容量が低下します。
また、空気は温度により密度が変化するため、夏季においては上記の影響がさらに大きくなります。
設計時に、風量が適正になるように容量検討は慎重に行う必要があります。

この台数制御は省エネ運転に直結するため、重要な検討項目となります。

(4)外気取り入れ
過去、送風機の吸気は、沈砂池の脱臭をかねて吸気を行っていました。送風機は反応タンクに送気される ため臭気対策としては合理的です。
しかし、送風機のインペラの汚損が想定以上にあり、効率の低下が問題となりました。 現在の吸気は外気取り入れに変更されています。

(5)潤滑油
送風機(電動機含む)の軸受用の潤滑油は、一台の潤滑油ポンプで全台の送風機の軸受に供給していました。 現在は、機器の信頼性の向上のため、個別の送風機本体に潤滑油タンクを設置し、機付き潤滑油ポンプで供給で きるようになっています。
また、潤滑油の冷却についても、共通の冷却水ポンプで行っていましたが、容量によりますが、個別空冷も利用されています。

(6)逆止弁
送風機の出口には、電動の吐出弁が設置されていますが、逆転防止のため逆性弁も取り付けられています。 通常の逆止弁であれば、自重で閉まるようにできていますが、運転時に風損が発生しないように改良された 逆止弁もあります。効率改善で1%程度が期待されるようです。小さいようですが、連続運転機器なので 改善効果はあるようです。

(7)送風機の配置
送風機の配置をどのようにするのが合理的なのでしょうか。反応タンク全体で1箇所(集中配置)、反応タンク個別に配置 (個別配置)でどちらが有利でしょうか。



比較 集中配置
個別配置
送風機本体
全体系列の送風を行うため機器が大型になります。
機器費用が高価となります。また、全体の予備機
が必要です。


単機容量が小さいためコスト的に有利ですが、故障時
の予備機が必要です。
系列に合わせた台数の設置が必要です。
設備的には、個別処理能力に対して十分余裕を見込む
必要があります。
補機類
補機的には、潤滑油の冷却系に水冷が必要です。



潤滑油の冷却方式が空冷にできたり、容量によっては
軸受けに潤滑油の冷却を必要としない場合もあります。

主配管類
管径の大きな送気配管を長距離で据え付ける必要が
あります。
このため、損失が増加傾向にあります。


反応タンクの直近に送風機を設置するため細い
配管径の使用が可能です。
ただ、各配管の集合体としての損失が集中配置型に
比較して有利かは、配置される場所によります。

各反応タンク
配管類
各反応タンクの配管径は、個別配置と同様

各反応タンクの配管径は、集中配置と同様

保守費用
1台あたりの送風機本体の修理費用は高く
なります。


1台あたりの送風機の修理費用は安価になります
ただ、1/4の容量で費用も1/4となるとは限り ません。

省エネ
反応タンクまでの配管損失が増加します
絞り運転が必要な場合の損失が増加します。



反応タンクまでの距離が短いので損失が少なく
なります。
また、低圧電動機の場合VVVFの使用で省エネが可能です。

保守性
1台あたりの点検は大型であっても変わらない。
修理期間が長くなります。



1台あたりの点検は、小型でも変わりません。
台数が増加する分、手間が増えます。
小型でも修理は、直営ではできないのでメーカー
修理となります。
修理期間は、短くなりますが極端に短くなりません。

以上の状況から集中配置・個別配置の状況は以下の様な感じで、有利不利がある点で入れ替わるので
はないでしょうか。
小規模の反応タンクで、小容量の送風機を使用する場合は、個別が有利だと思われます。
ある時点で、これが入れ替わる設備規模が生じると考えられます。
どの時点かは、個別の処理場で費用計算等(設備費用・保守費用等)の検討が必要と思われます。
ただし、既存が集中配置で、更新時に一部個別にする場合は、設備・保守費用及び省エネで優位さ
があまりないような気がします。




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